米共和党、ESG投資への新たな攻撃を開始

6月21日、米下院の共和党議員は、退職基金へのESG投資を制限することを目的とした新たな法案案を提出した。

共和党のアンディ・バー下院議員とリック・アレン下院議員が提出した新法案「健全なガイダンスの確保(ESG)法」は、退職年金制度の受託者によるERISA制度におけるESG要因の考慮の利用を阻止することを目的としてトランプ政権が導入した規則のいくつかの側面を復活させることを目的としている。

トランプ政権時代のルールは、2022年12月にバイデン政権労働省の「プラン投資の選択と株主の権利行使における慎重さと忠実さ」ルールによって事実上撤回され、ERISAプランのファンドマネージャーが投資プロセスにESGの考慮を含めることが認められた。また、委任状による議決権行使など株主の権利を行使する際、受託者が気候変動やESG要素を考慮することを認める一方、気候変動やその他のESG要因が投資に与える経済的影響など、「リスクとリターンの分析に関連すると受託者が合理的に判断した要素に基づかなければならない」とした。

その後、共和党は議会でDOL規則を覆し、バー氏は下院で規則を阻止する決議案のスポンサーとなり、バイデン大統領は2023年3月、規則を擁護するために初の大統領拒否権を発動するに至った。

新法案は、ESGを考慮した運用を阻止することを目的としたいくつかの規則を導入している。その中には、ERISAプランの受託者は、環境や社会的配慮のような非金銭的要因よりも、「金銭的」要因、つまり金銭的なリスクとリターンのみを判断基準とすること、また、他の同等な代替投資の中から選択する場合にのみ非金銭的要因を使用すること、ただしその場合、なぜ金銭的要因だけでは十分でなかったのか、その選択がポートフォリオに与える影響などについて、重要な文書化を要求すること、などが含まれる。

投資アドバイザーに対しては、投資家の書面による同意がある場合に限り、ESGのような非金銭的要因の考慮を認める。その上で、投資による予想される財務的影響について、アドバイザーによる開示を義務付ける(ただし3年以内の時間軸に限る)。

法案はまた、州や地方の年金制度がESGを考慮して「加入者と受益者の金銭的利益に劣後する」ことを利用することの「潜在的な影響」の調査を含む、政府による調査も要求する。

【参照ページ】
(原文)US Republicans challenge more fund managers on ESG
(日本語訳)共和党、ESG投資への新たな攻撃を開始

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る