オーストラリア証券投資委員会、企業の気候関連財務情報開示を支援

3月31日、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、サステナビリティ報告に関する規制ガイド「Regulatory Guide 280 Sustainability reporting(RG 280)」を発表した。本ガイドは、Corporations Act 2001の第2M章に基づき、気候関連財務情報を含むサステナビリティ報告の作成を義務付けられる企業、登録スキーム、登録可能な退職年金事業体、小売企業型集合投資ビークル(CCIV)向けの指針を示している。

ASICは、2024年11月7日に当ガイドを「Consultation Paper 380 Sustainability reporting(CP 380)」とともに草案を公開し、業界団体、法律事務所、コンサルタントなどから60件の意見を受け取った。公募で得られた広範な支持を反映し、最終版のRG 280には以下の改善が加えられた。

  • 気候シナリオ分析およびScope 3温室効果ガス排出量の開示に関する指針の追加
  • 報告義務の適用対象企業の取締役向けの具体的なガイダンスの追加
  • サステナビリティ報告基準の適用方法に関する追加指針
  • サステナビリティ報告内の情報ラベル表記に関する修正
  • サステナビリティ報告以外でのサステナビリティ関連財務情報の開示に関する指針の更新

ASICは、サステナビリティ報告要件の導入に伴い、監督および施行において実務的かつバランスの取れたアプローチを取るとしている。報告企業への支援として、ガイダンスの提供や実務モニタリングを継続するほか、誤解を招く記述があった場合には、企業と対話し、修正の機会を与える方針である。しかし、重大または無謀な違反が確認された場合や、報告義務を履行しない企業に対しては、調査や強制措置を実施する可能性があることを示した。

さらに、ASICは「stapled entities」に対し、グループ全体で統合されたサステナビリティ報告を作成することを認める救済措置を導入した。その他の報告や監査要件に関する救済申請についても、複雑な問題を伴う可能性があるため慎重に検討するとしている。

また、報告企業のバリューチェーン内にある中小企業や農業事業者向けに、サステナビリティ報告の影響や要件についての追加情報を提供する。ASICのウェブサイトでは、RG 280および関連情報が公開されており、詳細は「REP 809 Response to submissions on CP 380 Sustainability reporting(REP 809)」に記載されている。

(原文)ASIC issues sustainability reporting regulatory guide
(日本語参考訳)ASICが持続可能性報告規制ガイドを発行

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る