SEC、気候関連情報開示規則の訴訟対応を変更へ

2月11日、米国証券取引委員会(SEC)は、2024年3月に採択した気候関連情報開示規則「投資家向け気候関連情報開示の強化と統一規則(The Enhancement and Standardization of Climate-Related Disclosures for Investors)」に関し、訴訟対応の方針を見直す意向を示した。本規則は現在、第八巡回区控訴裁判所で争われており、SECは訴訟の完了まで本規則の施行を停止している。

SEC委員の中には本規則に対して懸念を示す声もあり、既存の開示規則で十分であり、新規則のコストが想定される利益を上回るとの主張もある。また、SECには本規則を策定する明確な法的権限がなく、財務リターンと直接関係のない情報開示を義務付けるべきではないとの見解もある。

パブリックコメント期間中も、本規則が財務的に重要でない情報の大量開示を求め、SECの規制権限を超えているとする批判が寄せられていた。SECが訴訟で提出した意見書は本規則を擁護する内容だったが、一部の委員は「SECの権限、規則の必要性、費用対効果の評価に疑問がある」とし、法的正当性について慎重な検討が必要だと述べた。

また、最近のSECの構成変更や、1月に発表された規制凍結(新政権が発足した際に、前政権下での規則制定を一時停止し、新政権の方針に沿って見直しを行う旨)の大統領覚書も、訴訟の進行に影響を与える可能性がある。このため、SECは裁判所に状況の変化を通知し、審理のスケジュール設定を一時保留するよう要請する方針を決定。今後の対応について慎重に協議した上で、訴訟に関する立場を改めて裁判所に報告する予定だ。

SECの気候関連開示規則は、企業の情報開示義務を強化する重要な取り組みとして注目される一方、規制範囲の適正性や企業負担の増大を懸念する声も根強い。今後のSECの決定が、規則の行方を左右することになりそうだ。

【参照ページ】
(原文)Acting Chairman Statement on Climate-Related Disclosure Rules

関連記事

“ランキングのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2025-3-24

    CDP、ESRS報告基準との対照表を発表

    3月18日、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)と国際的な非営利団体であるCDPは、欧州サステナ…
  2. 【新着】SBTiのネットゼロ基準の改訂案とは ?~ カーボンクレジットの扱いに明確な方針

    2025-3-21

    【新着】SBTiのネットゼロ基準の改訂案とは ?~ カーボンクレジットの扱いに明確な方針

    2025年3月19日、Science Based Targets initiative(SBTi)…
  3. TNFD開示の準備は万全?2025年の開示ポイントと追加対応を徹底解説

    2025-3-19

    TNFD開示の準備は万全?2025年の開示ポイントと追加対応を徹底解説(再掲)

    ※本記事は、2025年2月に発行した記事に「自然移行計画」の概要を追記・編集し再掲したものです。 …

““登録02へのリンク"

ページ上部へ戻る