6月13日、PwCは、EUのサステナビリティ開示規制である、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)に関する新たな調査報告を発表した。同調査は、様々な業界の企業を対象に行われ、この調査は、CSRDが企業に与える影響を理解し、企業がどの程度準備が整っているかを評価することを目的としている。
調査では、ほとんどの企業がCSRDの求める報告に対しての準備が整うことを少なくともある程度革新していることが判明した。2025年度の申告を予定している回答者のうち、自信がないと答えたのはわずか3%であった。
一方で、調査ではCSRDの求める報告内容についての課題も指摘している。企業は、CSRDが求める詳細なESGデータの収集と報告に困難を感じており、特に、サプライヤーとの協力体制の構築やデータの標準化が求められるため、サプライチェーン全体にわたるデータの一貫性と正確性を確保することが大きな課題だとしている。
また、調査回答者の90%以上が、サステナビリティレポートにスプレッドシートを使用、または使用を計画していると回答しており、これは、開示管理ソリューションや炭素計算ツールなどの技術を使用している企業よりはるかに多い。このようにESGデータの収集と報告に必要な技術インフラの整備が遅れている企業が多く、特に、データ管理システムの導入や既存システムとの統合が課題となっている。
一部の先進的な企業は既にCSRDに準拠した報告を開始しており、業界のベンチマークとなっている。先進企業は、ESGデータの透明性を高めるための取り組みを強化しており、他の企業にとってのモデルケースとなっている。先進企業は、データ収集の効率化や報告プロセスの自動化を進めるなど、ESG報告の品質向上に向けた内部プロセスの見直しやデータ管理システムの導入を進めている。
またPwCは、企業がCSRDに対応するためには、外部の専門家やコンサルタントの支援を活用するなどして、サステナビリティに関する知識とスキルを持つ専門人材の確保が重要であると指摘している。また、同社が提供するCSRDに準拠するための支援を利用することが、具体的なアクションプランの策定やESGデータの収集・報告のプロセスの最適化につながるとした。
CSRDは、企業のESG報告に対する期待値を大きく引き上げており、企業に対して包括的な準備と適応を求めている。調査によると、CSRDに基づく報告を準備している企業の約4分の3が、意思決定にサステナビリティをより大きく反映させている、または反映させる予定であると回答している。また企業は、環境パフォーマンスの向上・利害関係者とのエンゲージメントの改善・リスクの軽減など、CSRDから複数のビジネス上のメリットがもたらされると考えており、加えて、調査参加者の約3分の1は、CSRDの導入が収益の増加とコスト削減に直接つながると予想している。
【参照ページ】
(原文)The promise and reality of CSRD reporting
(日本語参考訳)CSRD報告の期待と現実