3月14日、エネルギー大手のシェルは「エネルギー転換戦略2024」を発表した。これは、2021年に発表した「Power Progess」戦略の最初の更新であり、同社の気候移行ロードマップと目標を概説したものである。更新された戦略には、バリューチェーンの排出量削減目標(スコープ3)の導入を求める長年にわたる株主の圧力に応え、石油製品の使用による排出量を削減するシェル初の中間目標が含まれている。
しかし、新たなスコープ3目標とともに、シェルは2035年の排出量原単位目標を廃止し、2030年の中間原単位目標も下方修正した。
2020年、シェルは2050年までに事業活動においてネット・ゼロを達成するというコミットメントを発表し、2021年には「Powering Progress」戦略を打ち出し、再生可能エネルギーやクリーンエネルギー・ソリューションへの投資を含む取り組みにより、スコープ1、2、3の排出量全体で2050年までにネット・ゼロ・エネルギー・ビジネスとなるという目標を達成する方法を詳述した。
同社はこれまで、スコープ1と2の排出量を削減する2030年目標を設定していたが、スコープ3の中間目標の設定は避けていた。スコープ3の排出量は、同社のカーボン・フットプリントの95%以上を占めており、「販売製品の使用」が約74%を占めている。
シェルは、環境保護団体や株主グループから、バリューチェーンにおける中間的な排出量削減目標を設定するよう圧力を受けており、今年初めには、石油・ガスに特化した株主活動家グループ「フォロー・ディス」が率いる、運用資産4兆ドル超を代表する27の機関投資家グループが、自社製品の使用から生じる排出量を削減するためのパリ協定に沿った中期目標を設定するよう求める株主決議を提出した。
更新された戦略にはスコープ3の目標が盛り込まれ、同社は2030年までに石油製品の使用による顧客の排出量を2021年比で15~20%削減することを目指すことになった。石油製品の使用による排出量は、同社の「販売製品の使用量」の半分以上を占めている。同社は、石油製品からの排出量は2023年にはすでに2021年基準から約9%減少していると指摘し、新たな目標は、契約がトレーディング目的で保有されるものとして分類されることによる8%ポイントを含め、2016年から40%の削減となると述べた。
更新された戦略では、シェルの2050年ネットゼロ目標と、スコープ1と2の排出量を半減する2030年中間目標は維持されているが、「エネルギー転換の変化のペースが不透明」であることから、販売する製品の正味炭素原単位を45%削減する2035年目標を廃止し、2030年正味炭素原単位削減目標を従来の20%目標から15~20%に修正したという。シェルは、2030年目標の修正について、商業需要家への電力販売を増やし、小売需要家への電力販売を減らすシフトにより、2030年までの電力販売の総成長が減少するためだと説明した。
【参照ページ】
(原文)Shell publishes Energy Transition Strategy 2024
(日本語参考訳)シェル、2024年エネルギー移行戦略を発行