ICMA、トランジションファイナンスに関する提言を発表

2月14日、国際資本市場協会(ICMA)は、債務資本市場におけるトランジションファイナンスに関するソートリーダーシップ・ペーパーを発行した。本ペーパーでは、2020年に発行された「クライメート・トランジションファイナンス・ハンドブック」以降の状況を整理し、市場に対して提言を行っている。

日本では、トランジションファイナンスをグリーンファイナンスとは別に位置づけ、2050年までのカーボンニュートラル(脱炭素)分野を資金使途とするものを「グリーンファイナンス」、低炭素分野を資金使途とするものを「トランジションファイナンス」と定義する傾向がある。しかし、ICMAはトランジションファイナンスをグリーンファイナンスの一部として扱い、特に排出量の多いセクターでのパリ協定の達成に資する気候変動緩和に関するものを広く「トランジションファイナンス」と定義している。

ICMAは今回、サステナブルボンド(ESG債)市場において、トランジションボンドが0.4%と非常に少ないことを指摘した。これには、適格な「トランジション」に関する基準が確立されていないことから、発行体や投資家が「グリーンウォッシュ」を懸念している状況が背景にある。

一方で、IFRSの国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)や欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)により、トランジションプランの策定がルール化されつつあることを評価している。発行体がトランジションプランを策定することで、これに基づくファイナンスがトランジションファイナンスとして確立されると期待される。特にトランジションプランには、発行体の自助努力に加えて、政策やサプライヤーとの関与も含まれるため、サステナビリティ・リンクボンドのKPI達成の可能性が高まると述べている。

ICMAは、今後の方向性として、発行体のトランジションプラン策定をより厳格にルール化する必要性を認識している。IFRS S2やESRSで規定されている要件を、企業の戦略アクションにまで高めて実施することが重要だと強調している。

【参照ページ】
(原文)ICMA publishes a new paper on transition finance in the debt capital market
(日本語参考訳)ICMA、債務資本市場における移行ファイナンスに関する新ペーパーを発表

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