IPEF、サプライチェーン協定締結

11月14日、サンフランシスコで開催されたインド太平洋経済枠組み(IPEF)第2回閣僚会議において、14の加盟国が「IPEFサプライチェーン協定」を強固なものとするために一堂に会した。現在のIPEF加盟国は、アメリカ、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、フィジーである。本枠組みは、貿易、サプライチェーン、クリーンエコノミー、租税と汚職防止の4つの主要セクターを包含している。

今回の会合は、IPEFの第7回交渉会合の位置づけを示すものであった。交渉の旅は、2022年12月にオーストラリアのブリスベンで開催された第1回会合に始まり、2023年初頭にはニューデリーとシンガポールで専門的な交渉会合が開催された。その後の交渉会合は、インドネシアのバリ、タイのバンコク、マレーシアのクアラルンプールで開催され、第2回閣僚会合直前の11月5日から12日にかけてサンフランシスコで開催された第7回会合に至った。

IPEFサプライチェーン協定の目的は、サプライチェーンに影響を与える貿易において、堅牢性、効率性、生産性、持続可能性、透明性、多様性、安全性、公平性、包括性を妨げる不必要な制限や障害を最小限に抑えることである。この協定では、結社の自由、強制労働、児童労働、非差別、労働安全衛生をカバーする国際労働機関(ILO)の中核的労働基準を含むと定義され、労働者の権利に大きな重点が置かれている。さらに、法定最低賃金や労働時間などの側面も盛り込まれ、ビジネスと人権に関する国連指導原則(UNGP)と密接に連携している。

協約は、サプライチェーンの強靭性を高める上で労働者の権利を尊重することを強調し、企業だけでなく著名な労働組合との継続的な協力を促している。協定に基づき設置された委員会は、労働者の権利に関する懸念や勧告を審議する権限を持つ。

さらに協定は、労働者の権利について高い基準を設定する企業へのインセンティブを導入し、労働者の権利を促進するための技術支援や能力開発を提供するよう政府に奨励している。

本協定はまた、サプライチェーンにおけるセキュリティリスクにも取り組んでおり、IPEF加盟国に対し、政府、企業、労働組合、学界、NGOなどの利害関係者との協議を通じて、重要なセクターや品目を特定するよう求めている。サイバーセキュリティのリスク管理対策は、重要な重点分野として強調されている。

特定された具体的な内容は、IPEF理事会を通じて加盟国間で共有される。特筆すべきは、情報が秘密として分類される可能性があり、そのような情報を受け取った加盟国は守秘義務を守らなければならないことである。現地の法律が情報公開を義務付けていない場合でも、情報の秘密を保持する義務は残る。

IPEF加盟国は、サプライチェーンが寸断されたり、差し迫った中断が予想されるような状況での協力を促進することを約束し、直接またはバーチャルな手段で緊急会合を要請する可能性を認めている。

先の第7回交渉会合では、第1の柱である「貿易」に関する合意は見送られたものの、第3の柱である「クリーン経済」と第4の柱である「租税・腐敗防止」については進展が報告された。クリーン経済分野では、新興国のカーボンニュートラル・イニシアティブを支援するIPEF基金が設立され、米国、日本、オーストラリアがそれぞれ約1000万ドルを拠出した。

IPEFサプライチェーン協定は、加盟国間の経済協力を強化し、サプライチェーンの強靭性を強化するための重要な前進である。

【参照ページ】
上川外務大臣のインド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚級会合への出席(結果概要)

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