IEA報告書:現在の政策では、2030年までに石油・ガス・石炭需要がピークに到達

IEA報告書:現在の政策では、2030年までに石油・ガス・石炭がピークに達する

10月24日、国際エネルギー機関(IEA)の主要な報告書である「World Energy Outlook(WEO)」2023年版によると、石炭・石油・天然ガスを含む化石燃料の需要は、現在の政策設定ではこの10年でピークに達すると予想されている。

IEAのWEO報告書は、現在進行中の主要なエネルギー市場動向を調査・分析し、3つのシナリオに従ってエネルギー投資と開発に関する数十年にわたる予測を示している。シナリオは以下の3つ、既存の政府政策に基づくStated Policiesシナリオ(STEPS)、政府によって設定された意欲的な目標が達成されると仮定するAnnounced Pledgesシナリオ(APS)、そして2050年までに排出量ゼロを達成するという世界的目標を達成するために必要なエネルギー市場の変革をカバーするNet Zero Emissions by 2050シナリオ(NZE)である。

前年のWEO報告書では、ウクライナでのロシア戦争への対応が、エネルギー自立とクリーンエネルギー移行に向けた投資の加速につながっていることが示唆されていた。今回の報告書では、クリーンエネルギー投資がさらに加速し、化石燃料からの脱却が進むことが示されている。現在の政策ベースのSTEPSシナリオでは、世界のエネルギー投資は2023年の2.8兆ドル(約430兆円)に対し、2030年には3.2兆ドル(約490兆円)に増加し、クリーンエネルギー投資は2.1兆ドル(約320兆円)に達し、増加分のすべてを占めるとIEAは予測している。

報告書は、STEPSシナリオにおいて、10年後までに世界のエネルギーシステムが大きく変化し、クリーンエネルギー技術が顕著になることを示している。例えば、世界全体で約10倍のEVが走行し、電力ミックスに占める自然エネルギーの割合が30%から50%に上昇し、ヒートポンプなどの電気暖房システムが2030年までに化石燃料ボイラーを上回り始める。

地政学的、経済的変化に加え、最近の政策変更もクリーン・エネルギーの見通し拡大に寄与している。米国のインフレ抑制法により、IEAは、米国の自動車登録台数の見通しを、わずか2年前の12%から、2030年までに50%がEVになると上方修正した。

しかし、クリーンエネルギーの見通しが改善されたにもかかわらず、STEPSシナリオは、地球温暖化を1.5℃に抑えるという目標を達成するために必要な変化にはほど遠く、2.4℃の気温上昇をもたらすと報告書は指摘している。これは、昨年のSTEPSシナリオの2.5℃からわずかに低下している。さらに報告書は、1.5℃の達成は可能であるとしながらも、それは非常に困難であると指摘している。NZEシナリオでは、2030年までにクリーンエネルギーへの投資額は4.2兆ドル(約630兆円)、先進国と中国では2倍に、新興国や先進国では現在の5倍近くに達する必要がある。

本レポートで検討されているエネルギー・システムの見通しに影響を与える主な変数のひとつは、中国で進行中および予測されている変化の影響である。中国は過去10年間における世界の石油使用量増加の3分の2近くを担っており、石炭市場でも支配的な地位を維持している。本レポートでは、同国の物理的インフラ整備の減速や経済成長の鈍化が、鉄鋼やセメントなどのエネルギー多消費産業の需要を低下させる影響を検証している。クリーンエネルギー容量への大規模な投資と並行して、中国のエネルギー需要は10年代半ば頃にピークを迎え、化石燃料の需要と排出量が減少すると予測している。

同報告書はまた、太陽エネルギーがクリーンエネルギー移行に大きく貢献する可能性についても検証した。2030年までに世界の太陽電池パネルの年間生産能力が1,200GWに達する可能性がある一方、STEPSシナリオでは500GWしか導入されないと予測している。IEAの分析によれば、稼働率を予想稼働率のわずか70%まで引き上げることは、クリーンエネルギーの見通しに大きな影響を及ぼし、ネット・ゼロ・シナリオで必要とされる水準まで導入量を引き上げることになる。しかし、このレベルの太陽光発電導入に対応するには、送電網や蓄電池などの分野に多額の投資を行う必要がある。

【参照ページ】
(原文)The energy world is set to change significantly by 2030, based on today’s policy settings alone
(日本語参考訳)IEA報告書:現在の政策では、2030年までに石油・ガス・石炭需要がピークに到達

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