IEA報告書:世界の気候目標達成には2040年までに8,000万キロの送電網投資が必要

IEA報告書:世界の気候目標達成には2040年までに8,000万キロの送電網投資が必要

10月17日、国際エネルギー機関(IEA)が発表した新しい報告書によると、世界的な気候変動目標の達成を可能にするためには、電力網への投資を今後数年間で急速に拡大する必要がある。

報告書によると、2040年までに8,000万キロメートルの送電線を増設または交換する必要がある。これは現在の世界全体の送電網にほぼ匹敵し、すべての国の気候・エネルギー目標を達成するためには、2030年までに投資額は年間6,000億ドル(約89兆円)超に倍増する。

報告書は、風力発電や太陽光発電、EV、ヒートポンプなどのクリーンエネルギー発電・技術の急速な成長に、送電網への投資が追いついていないことを指摘した。例えば、再生可能エネルギーへの投資は過去10年間でほぼ倍増したが、送電網への投資は世界全体でほぼ横ばいの年間約3,000億ドル(約44兆円)にとどまっている。

IEAの報告書によると、電力インフラの成長が他のクリーンエネルギー技術に遅れをとっているため、送電網がエネルギー転換の大きなボトルネックになっている。

IEAはまた、本報告書のためにシナリオ分析を行い、送電網への投資と規制改革が遅れた場合、2030年から2050年の間に累積炭素排出量が600億トン近く増加し、気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標に手が届かなくなり、2℃を超える可能性が40%生じることを明らかにした。

報告書はまた、新たな送電網インフラ・プロジェクトのリードタイムが長いことを踏まえ、送電網への投資を増やすための迅速な行動の必要性を示した。さらに、電力インフラがネット・ゼロの障壁にならないようにするための提言として、国や地域内および地域間の送電網相互接続の拡大・強化、大規模送電プロジェクトに対する政府の支援、将来的によりレジリエントでフレキシブルな送電網を可能にするためのデジタル化の活用などを挙げている。

【参照ページ】
(原文)Electricity Grids and Secure Energy Transitions
(日本語参考訳)IEA報告書:世界の気候目標達成には2040年までに8,000万キロの送電網投資が必要

関連記事

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2025-5-16

    EBA、EU域内銀行の気候リスク指数を初公開

    4月25日、欧州銀行監督機構(EBA)は25日、EUおよびEEA(欧州経済領域)域内の銀行セクター…
  2. 2025-5-16

    米国グリーンビルディング協会、持続可能な建築基準「LEED v5」を発表

    4月28日、米国グリーンビルディング協会(USGBC)はLEED(Leadership in En…
  3. 2025-5-14

    ニューヨーク市会計監査官、新たな排出削減基準を発表

    4月22日、ニューヨーク市会計監査官(Comptroller)のBrad Lander氏は、アース…

““登録03へのリンク"

ページ上部へ戻る