9月14日、プロフェッショナル・サービス企業であるKPMGが発表した新しい調査によると、企業のESG戦略は、M&Aや新製品の開発機会から人材や顧客の維持に至るまで、事業や財務の成果にプラスに働くと期待する企業が増えているが、多くの経営幹部は、複雑で変化するサステナビリティ規制要件に対応し続けることに懸念を抱いており、複数の法域にまたがるESG報告要件を満たす自信があると回答したのは4分の1程度にとどまっている。
KPMGは「KPMG米国ESG調査」と題するこの調査で、複数の業種にわたる売上高10億ドル(約1,486億円)以上の企業で、自社のESG戦略の側面に責任を持つ200人以上のビジネスリーダーを対象に調査を行った。
調査対象者の92%は北米に本社を置く企業であったが、67%は3つまたは4つの国・地域でESGに関する報告を求められると回答した。
調査によると、ビジネスリーダーはサステナビリティと企業戦略の関連性が高まっていると考えており、回答者の43%が、自社の事業目標と環境目標は5年前よりも緊密に連携していると報告している。この結果は、特に大企業(従業員1万人以上)で強く、66%に達した。
ビジネスリーダーは、ESGが自社のビジネスに付加価値を与えている分野として、M&Aの有効性を挙げており、41%がESGへの関与が財務的価値を大きく高めていると回答している。
今後、サステナビリティへの取り組みによって価値創造が期待される分野は多岐にわたり、中でも新規顧客の獲得(40%)は2~5年後に財務的価値が高まると見込んでおり、人材の採用と維持(37%)、プレミアム価格による収益の増加(37%)、資本コストの削減(38%)などが大きな利益を生むと予測されている。
ビジネスリーダーがサステナビリティ戦略から価値と機会を生み出すと予想する中、多くの企業がESG活動に再注力していると報告している。昨年KPMGが実施した調査では、59%が経済の不確実性を考慮し、ESGへの取り組みを一時停止または再検討する予定であることが示されたが、今回の調査では、55%が潜在的な景気後退にもかかわらず、実際にESGへの取り組みを拡大し、約4分の1のみが縮小していることがわかった。
経営幹部は、自社の持続可能性の進捗状況や取り組みに関する透明性を高める圧力が高まっていると報告したが、この圧力の最大の原因は規制当局からではなく、サプライチェーン・パートナーからであり、回答者の88%が、これらの利害関係者はESG報告や透明性の向上を「ある程度」または「大いに」求めていると答えた(規制当局の80%に対し)。その他、従業員(82%)、機関投資家(81%)、顧客(81%)もESGの透明性向上に対する需要の上位を占めている。
しかし、複数のステークホルダーから透明性向上への圧力が高まる一方で、回答者の約半数(53%)しか、米国におけるサステナビリティ報告要件を満たす能力に少なくとも多少自信があると回答しておらず、米国、EU、その他の地域における将来のESG報告要件を満たすことができると確信しているのはわずか4分の1であり、3分の2は3~4つの国・地域で報告が求められると予想している。
さらに、SECは当初2022年3月に導入した気候関連報告規則の最終化プロセスを延長し、今年後半には最終規則ができる見込みだが、調査回答者の40%以上が、ESG報告のスピードが遅くなったか、完全に停止したと回答している。
回答者が報告したESG報告要件を満たすための主な課題には、10K提出期限内に環境報告データを完成させることが含まれ、50%がこれを「主な」または「非常に重要な」課題として挙げ、次いで報告を管理するためのリソースや人材のコスト(46%)、データ収集・管理・報告への投資(46%)が続いた。さらに、45%が、持続可能性戦略を報告要件と整合させることも「主要な」または「非常に重要な」課題であると回答し、スコープ3排出量の測定は上位5つの課題カテゴリーに入らなかった。
【参照ページ】
(原文)KPMG Survey: Business Leaders Bullish on ESG Strategies Driving Value, Execution Challenges Remain
(日本語参考訳)KPMG調査: ビジネスリーダーはESG戦略が価値を生むと強気、実行には課題が残る