8月29日、国際環境NGO世界資源研究所(WRI)は、技術的炭素除去(CDR)の国際ガバナンスに関する新しいワーキングペーパーを発表した。
2023年5月現在、62カ国が長期的な低排出開発戦略(長期戦略)を提出しており、そのうちの約半数に当たる26カ国が技術的CDRに関心を示しているにもかかわらず、技術的CDRが果たしうる役割について、国際レベルではガイダンス策定はおろか議論すらされていない状況を指摘。CDRの公平性(エクイティ)と、正確な測定・報告・検証(MRV)を保証するためにはより多くの指針が必要であるの見解を示した。
調査では、緩和抑止力の管理、エクイティの促進、MRVの改善に関する3つの主要なガバナンス・ギャップを特定し、それらに対処に向けた既存の国際機関の役割を探った。
緩和抑止力とは、CDRに投資することで、将来の技術が大規模な炭素除去をもたらすという誤った安心感を与え、緊急に必要な排出削減への関心を低下させるという懸念を指す。このような問題を解決するために、まず、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が排出削減とCDRの個別目標を設定するよう各国に呼びかけることが必要とした。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に対しては、長期的なCDRへの依存を最小化する経路に焦点を当てた研究と情報発信を行い、異なるシナリオの下での最適なCDR量を特定すべきと提言。アカデミアは、IPCCが報告書のために分析する統合評価モデルに、より幅広いCDRアプローチを含めるべきとした。
エクイティの確保については、UNFCCCに対し、気候技術センターとネットワークを活用した、共同研究開発の促進と能力構築の支援を要請した。また、ミッション・イノベーションのCDRミッションやクリーン・エネルギー閣僚会議のような機会を活用し、CDRに関する議論を深めるべきとした。NGOに対しては、公的所有権や地域社会の所有権など、地域に便益が行き届く所有スキームに関するさらなる調査について言及した。
MRVについては、UNFCCCは、パリ協定第6条の下で取引されるクレジットを、排出削減とCDRに区別すべきと提言。IPCCに対しては、技術的CDRアプローチに関するインベントリー及び報告ガイダンスの作成を要請した。
【参照ページ】
(原文)Recommendations for Governing Carbon Removal in Long-term Climate Planning
(日本語訳)WRI、長期気候計画におけるCDR管理に関する提言を発表