6月26日、IFRS財団の国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)は、新しいグローバルなサステナビリティ及び気候変動開示基準を正式に発表した。新基準は、2024年1月から始まる年次報告期間から適用が開始され、企業は2025年に同基準に照らした開示の発行を開始する。
ISSBは2021年11月、COP26気候変動会議において正式に発足し、IFRSサステナビリティ開示基準を策定することを目標としている。これは、投資家、企業、政府、規制当局からの、サステナビリティリスクと機会が企業の将来性に及ぼす影響について一貫した理解を可能にする、開示要件のグローバルなベースラインを提供するという要求に後押しされたものである。
欧州、英国、米国など、世界の主要な管轄区域の規制当局は、企業に対するサステナビリティ報告義務要件を導入、または準備中であり、そのほとんどがISSB基準の影響を大きく受けることになる。
2つの新しい基準には、「IFRS S1 サステナビリティ関連財務情報の開示に関する一般要求事項」と 「IFRS S2 気候関連の開示」が含まれる。各基準の中核的な内容には、一般的なサステナビリティと気候変動に特有のリスクと機会に関する開示がそれぞれ含まれており、ガバナンス(ガバナンスとは、リスクと機会を監視・管理するために使用される統制と手続きのこと)、戦略(戦略とは、リスクと機会を管理するために使用されるアプローチのこと)、リスク管理(リスクと機会を識別、評価、優先順位付け、監視するために使用されるプロセスのこと)、指標と目標(企業が設定した、または法律や規制によって達成することが義務付けられている目標に対する進捗状況を含む)が含まれる。
IFRS第1号は、「短期、中期、長期にわたって企業のキャッシュフロー、資金調達、資本コストに影響を及ぼすと合理的に予想されるもの」など、一般目的の財務報告書の主要な利用者にとって有用な、持続可能性に関連するリスクと機会に関する情報を開示することを企業に求めている。
本基準におけるリスクと機会とは、「企業のバリューチェーン全体を通じて、企業とその利害関係者、社会、経済、自然環境との相互作用から生じるもの」であり、事業活動から生じる直接的及び間接的な相互作用を含む。同基準は、直接的な影響や依存関係に加え、持続可能性に関連するリスクは、「企業のバリューチェーン全体の資源や関係にも関連する」と指摘している。
IFRS第2号は、第1号との併用を目的としており、気候変動に関連する特 定の開示が定められている。S2で要求される気候関連の指標には、スコープ1、2、3の温室効果ガス(GHG)排出量の報告が含まれるが、ISSBは最近、スコープ3(間接的 なバリューチェーン)の排出量については、1年延長して報告することを認めると発表した。同基準はまた、気候変動への配慮が役員報酬にどのように織り込まれているか、役員報酬に占める気候変動への配慮の割合についての報告も求めている。
新基準の発表後、ISSBは、この基準の適用を支援するための移行実施グループの設立を皮切りに、各法域や企業と協 力し、基準の適用を支援していくとして いる。また、フェイバーISSB委員長は、気候変動報告基準に、自然生態系、森林減少、 生物多様性、公正な移行との関連性を含む要件を近々追加する可能性があると述べた。
【参照ページ】
(原文)ISSB issues inaugural global sustainability disclosure standards
(日本語訳)ISSB、グローバルな持続可能性情報開示基準の制定を発表