5月11日、英ESG投資推進NGOのShareActionは新しい報告書を発表した。本報告書によって、世界の資産運用会社のほとんどが、人権侵害への取り組みに役立つ主要なポリシーの利用を制限していることが明らかとなった。
報告書によると、ポートフォリオ内のすべてのファンドにおいて、人権侵害企業への投資を除外している資産運用会社はわずか6%であった。半数以下は、ESGファンドに限って投資を除外している。残りの運用会社は、全く除外していないか、部分的に除外しているに過ぎない。
本調査は、ShareActionの4部構成のPoint of No Returnsシリーズの3回目である。本調査は、人権に関する国際条約、労働者の権利に関する合意された基準、健康に関する投資家の枠組み、国連の先住民の権利枠組みなどの実施を通じて、世界の資産運用会社が社会問題にどのように対応しているかを評価するものである。
資産運用会社が投資を行う際、先住民の権利を最低限しか考慮していないことが明らかになった。先住民や地域コミュニティに影響を与えるプロジェクトについて発言権を与える、国連の原則である「自由意志に基づく、事前の、十分な情報に基づく合意」を組み込んだ投資コミットメントを実施しているのは、わずか10社に過ぎない。
また、生命を脅かす公衆衛生問題に取り組むために、資産運用会社がいまだにその影響力を行使できていないことにも言及。薬やワクチンへのアクセス不足、大気汚染、不健康な食品など、回避可能な公衆衛生問題によって、毎年何百万人もの死者が出ている。しかし、ほとんどの資産運用会社は、タバコのような長年の問題を除いて、これらの健康関連のテーマについてコミットメントしていない。
資産運用会社は、十分なデータがない、あるいは十分なデータがないことを理由に、人権や健康問題に取り組んでいないことを弁解している。しかし、報告書によると、資産運用会社はこの問題に対処するための最も明白な手段を講じていない。社会的データを公表するよう企業に働きかけることを優先している運用会社は10%未満であり、さらに、40%が企業に社会的影響に関するデータの公開を求めていないことを認めている。
【参照ページ】
(原文)Asset Managers Failing to Comprehensively Protect Human Rights
(日本語訳)ShareAction、運用大手77社の社会テーマを評価、94%が包括的な人権保護に失敗と発表