6月1日、EU議会は、企業の活動やバリューチェーンが人権や環境に与える影響を特定し、対処することを求める新規則と、気候変動移行計画の採択と実施を求める新規則を366対225で採決した。
新規則は、2022年2月に発表されたEU委員会の企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)案に対する議会の交渉姿勢を示すもの。EU理事会は、2022年12月に同指令に関する見解を採択した。
EU委員会が提案した指令は、企業に対し、デューデリジェンスを政策に組み込み、人権や環境への悪影響の実際または可能性を特定し、潜在的な影響を防止または軽減し、実際の影響を終息または最小化することを求める。同指令は企業の事業、子会社、バリューチェーンに適用される。
新規則は、従業員500人以上、売上高1億5000万ユーロ(約208億円)以上の企業から適用され、その後、従業員250人以上、売上高4000万ユーロ(約59億円)の企業にも拡大される。また、EU域内で基準値を超える収益をあげているEU域外の企業も、同規則に従うことが求められる。
EU議会の見解が当初の提案と比較して採用した最も大きな変更点は、指令の対象となる企業が、地球温暖化を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標に沿った気候移行計画を、スコープ1、2、3の排出量を包含して実施することを義務付けることである。また、企業は、同じくパリ協定の目標に沿った気候の影響に関するデューデリジェンスを実施することが求められるようになる。
また、従業員数1,000人以上の企業に対しては、気候変動対策の実施に加え、同計画の目標達成を取締役の変動報酬に反映させることも求めている。
EU理事会が採択した提案に比べ、議会の立場は、資産運用会社などの金融サービス業者や投資家を含めることで、より広範に適用される。
新規則には、遵守しない企業に対する制裁と監督メカニズムが盛り込まれ、企業の商品の市場からの排除、企業の世界的な収益の5%にも及ぶ罰金の賦課、非EU企業の場合はEUでの公共調達の禁止などが含まれる可能性がある。
【参照ページ】
(原文)MEPs push companies to mitigate their negative social and environmental impact
(日本語参考訳)EU議会、企業に気候変動移行計画の導入を義務付けることを議決