ERMの新レポート、ESG格付け機関をランク付け

3月23日、世界最大のサステナビリティ・コンサルタント会社であるERMは、ESG格付けの状況について最新の評価を発表した。ERMのサステイナビリティ研究所が開発した「Rate the Raters」は、需要が急増する一方で、データの正確性やESG格付けの全体的な品質・有用性に関する企業や投資家からの懸念が高まっていることを明らかにした。

新レポートによると、調査対象企業の半数以上が、少なくとも6つのESG格付けプロバイダーと取引していると報告している。CDPは、企業の調査回答者から、品質と有用性の両面で最も優れたESG評価機関として評価された。投資家もCDPを有用性でトップと評価しているが、品質ではISS-ESGがリーダーであると認識していた。CDPとISS-ESGに加え、企業や投資家が品質と有用性で最も頻繁に引用するESG格付けは、Sustainalytics、MSCI、EcoVadis、Bloombergであった。

ESG評価者との関わりを深める主な要因は「投資家の要望」であり、57%の企業がこれを最大の動機として挙げ、次いで21%の企業が業績評価を挙げている。これは、ESG評価やデータが投資戦略に組み込まれるようになってきたことを反映している。投資家の回答者の43%が、ESG格付けプロバイダーを利用する最大の理由として、ESG格付けとデータを投資手法に組み込むという企業による要件を挙げている。2018/19年はわずか12%で、大きく増加した。

しかし、報告書によると、企業の4分の1以上(29%)は、「ESG格付けがESGパフォーマンスを正確に反映している」という信頼が低いか非常に低く、半数(52%)は中程度の信頼しか持っていないことが判明した。ESG評価者の品質と有用性に対する企業の認識は、2018/19年以降、全体的に低下している。

ESG格付プロバイダーに対する信頼度は、59%が「中程度」、38%が「高い~非常に高い」と回答しており、より高い信頼度を示している。しかし、本調査では、投資家がESGの専門知識を構築するために近年行ってきた努力を反映し、ESG指標、測定基準、格付けを自社で開発する傾向が顕著であることも明らかになった。

投資家と企業の双方において、約半数が「格付け手法の一貫性と比較可能性の向上」と「手法の品質と開示の改善」を、ESG格付け機関が信頼を維持するために解決すべき重要な課題として捉えている。

ERMの報告書は、ますますダイナミックになるサステナブル投資環境を背景として発表された。現在、ESGファンドが急成長し、企業のESGパフォーマンスが厳しく吟味されている。また、企業はESGの開示要件の増加に直面しており、EU、米国、その他の地域の規制当局が広範囲に及ぶ新規則を確定している。

【参照ページ】
(原文)New ERM report ranks ESG ratings agencies and urges action to maintain business and investor trust
(日本語参考訳)ERMの新レポート、ESG格付け機関をランク付け

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る