2月28日、三井住友フィナンシャルグループ、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス、日本政策投資銀行、農林中央金庫の金融機関4社は、企業における事業活動のネイチャーポジティブ転換を促進・支援することを目的とした「Finance Alliance for Nature Positive Solutions(FANPS)」を新たに発足した。
FANPSは、SMBCグループ、MS&ADホールディングス、日本政策投資銀行、農林中央金庫を中心に、株式会社日本総合研究所、MS&ADインターリスク総研株式会社、株式会社日本経済研究所、株式会社農林中金総合研究所を加えたメンバーで構成される。また、国立研究開発法人国立環境研究所と共同研究契約を締結し、ネイチャーポジティブソリューションの調査について科学的見地から助言する。この他、生態学など関連する専門分野の研究者とも連携し、産学でネイチャーポジティブに係る知見を集積する場を整備する。
2022年12月の国連生物多様性条約COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では「2030 年までに生物多様性の損失を食い止め、回復傾向へ向かわせる」、いわゆるネイチャーポジティブの概念が取り入れられた。企業には今後、カーボンニュートラルに向けた気候変動対応に加えて、自然への過度な依存の緩和や生態系の復元等をはじめ、ネイチャーポジティブに向けた取組みが求められる。また、2023年9月には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)による情報開示フレームワークが発表されることから、企業の取組みは一層加速すると想定される。事業における自然との関わりは場所及び事業活動ごとに多様であり、ネイチャーポジティブに向けた一律の解決策はない。事業やサプライチェーンに関連する場所ごとの自然特性を把握し、影響を評価したうえで、いかにネイチャーポジティブに導くかのソリューションを考える必要がある。
そのソリューションや、自然関連リスクの分析・評価や対応の方法も多岐にわたり、世界の多くの企業は模索しながら取組みを進化させている。グローバルに展開する金融機関4社は、このような世界的潮流をいち早く捉え、企業のネイチャーポジティブに向けた取組みへの支援と国内の機運醸成のためには、共同調査・研究が欠かせないと認識し、FANPSを発足させるに至った。
今後の展望としてFANPSでは、こうした課題認識を背景に、事業活動を通じて生物多様性を含む自然資本の喪失を食い止め、回復傾向へ向かわせるために下記のテーマを中心に研究を進める。
(1) ネイチャーポジティブに資するソリューションの調査、整理
自然関連リスクの分析方法・ツールや、リスクの緩和に寄与するソリューションを調査し、研究者とも連携してネイチャーポジティブに有効なソリューションをカタログ化して公表する。事業地の自然関連リスクのみならず、サプライチェーン全般を調査対象とする。
〔例:湿地再生や雨水浸透策による水源涵養/環境再生型農業による土壌環境や水環境の改善〕
(2) ネイチャーポジティブに資する事業活動への転換を支援、促進する金融の検討
上記の調査を踏まえ、自然へのインパクトを減らすビジネスモデルや、自然を再生・回復する技術の実装を支援するファイナンスについて検討する。
〔例:環境インパクトボンド/生物多様性リンクローン/自然配慮評価融資〕
SMBCグループとMS&ADホールディングス、日本政策投資銀行、農林中央金庫は、FANPSを通じて得た知見を活用し、企業のネイチャーポジティブへの取組みを支援する具体的なソリューションやファイナンスを提供する仕組み作りを目指す。
【参照ページ】
~ネイチャーポジティブ転換の促進・支援に向けた金融機関 4 社によるアライアンス~
「Finance Alliance for Nature Positive Solutions」の発足について