UNEPとELD、「自然のための資金の現状」第2版を発行

12月1日、国連環境計画(UNEP)と土地劣化の経済学(ELD)は、「自然のための資金の現状」第2版を発行した。本報告書では、世界が 2020年以降の生物多様性世界フレームワークの交渉に向かう中、自然は未だ資金不足であることが明らかになった。

地球温暖化を1.5℃以下に抑え、生物多様性の損失を止め、土地劣化の中立性を達成し、持続可能な開発目標を達成するためには、排出削減、自然保護、持続可能な消費と生産について劇的かつ緊急の行動が必要である。自然を基盤とした解決策(NbS)は、様々な課題に総合的に取り組む機会を提供する。しかし、NbSに対する資金の流れは現在わずか1,540億米ドル(約20兆円)/年であり、2025年までに必要なNbSへの投資額3,840億米ドル(約50兆円)/年の半分にも満たず、2030年までに必要な投資額4,840億米ドル(約63兆円)/年のわずか3分の1にしかならない。

カナダのモントリオールで開催される国連生物多様性会議(COP15)の中で、2020年以降の生物多様性世界フレームワークの実施とNbSへの投資のための資源動員も重要な議題となっている。UNEPはパートナーとともに、金融部門が自然を肯定する目標に沿った活動を行うよう各国に求める明確なマンデートを設定するよう各国政府に求めている。

気候変動、生物多様性の損失、土地の劣化に即座に取り組むには、現在の世界の投資を2025年までに毎年2,300億米ドル(約30兆円)増やす必要がある。政府は現在、NbS資金の流れの83%を提供しているが、紛争、債務、貧困に関連する財政上の課題により、この流れを劇的に増加させることは困難である。したがって、民間部門は現在の年間260億ドル(約3兆円)から大幅に投資を増やす必要がある。そのためには、持続可能なサプライチェーンへの投資を増やし、気候や生物多様性に負の影響を与える活動を減らし、不可避な影響を高潔な自然市場を通じて相殺し、利用する生態系サービスに対して支払い、自然を肯定する活動に投資する必要がある。

本報告書では、NbSへの投資全体のうち、海洋ベースのソリューションを対象とするものはわずか9%であると結論付けている。海洋は地球表面の70%以上を占め、全CO2排出量の約25%を吸収し、世界最大の炭素吸収源の一つであると同時に、世界のタンパク質の17%を供給している。

【参照ページ】
(原文)Doubling finance flows into nature-based solutions by 2025 to deal with global crises – UN report
(日本語参考訳)UNEPとELD、「自然のための資金の現状」第2版を発行

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