UNEP、自然資本を喪失させる5つの要因を解説

12月8日、国連環境計画(UNEP)は、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の世界評価報告書によって明らかにされた、 自然資本を喪失させる上位5つの要因について解説した。

1つ目は、土地および海洋利用の変化である。生物多様性の損失をもたらす最大の要因は、人々が土地や海をどのように利用しているかであり、これには、森林、湿地、その他の自然生息地などの土地被覆の農業や都市利用への転換が含まれる。

1990年以降、約4億2,000万ヘクタールの森林が他の土地利用への転換によって失われている。農業の拡大は、森林減少、森林劣化、森林の生物多様性損失の主な要因であり続け、さらに農業だけで、絶滅の危機にある28,000種のうち85%以上の脅威が確認されている。また、海底から鉱物などの物質を採取したり、街や都市を建設したりすることも、自然環境や生物多様性に影響を及ぼす。

生態系への負荷を軽減するためには、人々が食物を栽培し、消費する方法を見直すことが有効である。劣化して使われなくなった農地は修復に適しており、森林、泥炭地、湿地などの重要な生態系の保護と回復をサポートできる。

2つ目は、気候変動である。1980 年以降、温室効果ガスの排出量は倍増し、世界の平均気温を少なくとも 0.7℃上昇させた。地球温暖化はすでに世界中の種や生態系に影響を与えており、特にサンゴ礁や山岳地帯、極地の生態系など、最も脆弱な生態系に影響を及ぼしている。気候変動による気温の上昇は、地球レベルで6種に1種の割合で脅威となる可能性があると指摘されている。

森林、泥炭地、湿地などの生態系は、地球規模で重要な炭素貯蔵庫となっている。パリ協定の目標を達成するためには、その保全、回復、持続可能性が不可欠である。自然との協力により、2030年までに二酸化炭素換算で年間11.7ギガトンまで排出量を削減できる。これは、地球温暖化を抑制するために必要な量の40%以上に相当する。

3つ目は、環境汚染である。化学物質や廃棄物などの汚染は、生物多様性と生態系の変化の主な要因であり、特に淡水と海洋の生息地に壊滅的な直接影響を及ぼしている。植物や昆虫の個体数は、非常に危険で非選択的な殺虫剤の継続的な使用の結果、減少している。海洋プラスチック汚染は1980年から10倍に増え、ウミガメの86%、海鳥の44%、海洋哺乳類の43%を含む少なくとも267種の動物に影響を及ぼしている。また、大気汚染や土壌汚染も増加の一途をたどっている。

世界的に見ると、大気中の窒素の沈着は、世界の生物多様性の完全性に対する最も深刻な脅威の一つである。窒素が陸上生態系に沈着すると、影響の連鎖が起こり、多くの場合、生物多様性の全体的な減少をもたらす。大気汚染や水質汚染を減らし、化学物質や廃棄物を安全に管理することは、自然の危機に対処するために極めて重要である。

4つ目は、天然資源の直接利用である。野生種の持続可能な利用に関する最近のIPBES報告書は、動植物の持続不可能な利用が、世界中の100万種の生存を脅かしているだけでなく、食料・燃料・収入を野生種に依存する何十億もの人々の生活を脅かしていることを明らかにした。

土地や海の劣化を食い止め、元に戻すことで、100万種の絶滅危惧種の喪失を防ぐことができる。また、優先地域のわずか15%の生態系を回復させることで、生息環境を改善し、絶滅を60%削減することができるという。

COP15では、命を救う医薬品などの基礎となる遺伝子を持つ動植物や微生物の保護が交渉の焦点となる。この問題は、国際協定である名古屋議定書によって管理されるアクセスと利益配分として知られている。また、先住民族を含む社会から疎外されたコミュニティが、自給自足経済(基本的なニーズに対する生態系のサービスの供給と調整に基づくシステム)からどのように利益を得るかが検討される予定。土地との精神的なつながりを通して、先住民族は生物多様性の守護者として重要な保護的役割を担っている。

5つ目は、外来生物である。侵略的外来種(IAS)とは、自然の生息地以外の環境に侵入し、定着した動物、植物、菌類、微生物などのことである。IASは在来の動植物に壊滅的な影響を与え、在来種の減少や絶滅を招き、生態系に悪影響を及ぼす。

物資の輸送や移動が増加したグローバル経済は、長距離で、自然の境界を越えた外来種の導入を促進した。これらの種が生物多様性に及ぼす悪影響は、気候変動、生息地の破壊、汚染によって強まる可能性がある。

17世紀以降、原因がわかっている動物の絶滅のうち、40%近くはIASが原因である。一方、オーストラリア、ブラジル、インド、南アフリカ、イギリス、アメリカにおける移入害虫による環境損失は、年間1,000億ドル(約13兆円)以上に達すると推定される。

IASは、国際的な協力と行動を必要とするグローバルな問題である。これらの種の国際的な移動を防止し、国境で迅速に検出することは、防除や根絶よりもコストがかからないとされている。

【参照ページ】
(原文)5 key drivers of the nature crisis
(日本語参考訳)UNEP、自然資本を喪失させる5つの要因を解説

関連記事

“セミナーへのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. ESGセミナー・イベント一覧(2024年11月以降)

    2024-11-18

    ESGセミナー・イベント一覧(2024年11月以降)

    サステナビリティを推進には新しい知見の収集が必須。しかし、必要なセミナー情報を見つけるのに時間がか…
  2. ISSA5000とサステナビリティ保証:企業が今すぐ始めるべき対応ポイント

    2024-11-18

    ISSA5000とサステナビリティ保証:企業が今すぐ始めるべき対応ポイント(再掲)

    サステナビリティ情報、非財務情報、ESGデータなど企業のサステナビリティの取り組みを示す情報は、投…
  3. 2024-11-15

    【PR】12/3 記念イベントESG評価スコア改善『S&Pに聞く!2025年に向けたCSA徹底解剖』 (オンライン)

    いつもESG Journal Japanをご覧いただきましてありがとうございます。 ESG評…

““登録02へのリンク"

ページ上部へ戻る