11月5日、デロイトの新しい報告書によると、ネット・ゼロ・エコノミーへの移行により、世界経済は43兆ドル(約6,300兆円)の恩恵を受けるか、178兆ドル(約2.6京円)の経済的損失に直面する可能性があるとのことだ。
デロイトの新しい報告書では、特に労働力に焦点を当て、脱炭素化がもたらす影響を詳細に検討し、気候変動や脱炭素化に対して最も脆弱な職種を特定するための新しい「雇用脆弱性指標」を紹介している。
本報告書によると、世界の労働人口の4分の1に相当する8億人以上の仕事が、気候変動による破壊に対して非常に脆弱であり、洪水、嵐、熱波などの気候変動による物理的被害と、低炭素経済への移行による影響の両方に起因するリスクがあることが示されている。
報告書では、気候変動による物理的被害とネット・ゼロ移行リスクに最もさらされるセクターとして、農業、従来型エネルギー、重工業・製造業、運輸、建設業が挙げられている。地域別では、アジア太平洋地域とアフリカが最も脆弱な労働力を抱えており、その40%が最も気候変動の影響を受けやすい産業に従事している。
しかし、気候変動は大規模な経済リスクをもたらす一方で、報告書は、ネット・ゼロ経済への移行が成功すれば、新たな雇用と技能の創出、気候変動の影響の最小化から生じる大きな機会も強調する。報告書によると、協調的な気候変動対策により、2070年までに正味現在価値ベースで43兆ドル(約6,300兆円)の経済規模が拡大し、「グリーンカラー」労働力の創出により3億人以上の新規雇用が創出される可能性があるという。
しかし、こうした効果を実感するためには、スキルへの投資を政府や企業の優先課題とする必要があるとしている。本報告書では、デロイト経済研究所が開発した「グリーンカラー人材政策アジェンダ」を提示し、産業と労働者が低炭素化移行に適応するために意思決定者が取るべき行動を概説している。主な提言は、高価値の仕事に就くための雇用経路の構築、需要の高いスキルを持つ高成長分野への進路を容易にする教育・訓練システムの改革、効果的なスキルの再配置を促進する政策の活用、産業や企業が効果的なビジネス判断を行うための明確な排出削減目標の設定、政府、金融、テクノロジーにまたがる高いレベルの協力関係の追求などである。
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(原文)2022 Global Impact Report