ECB、金融政策の枠組みに気候変動への配慮をさらに組み込むため、新たな措置を発表

 

7月4日、欧州中央銀行(ECB)は、金融政策の枠組みに気候変動への配慮をさらに組み込むための一連の動きを発表した。これには、保有する社債のポートフォリオを長期的に脱炭素化するための措置や、担保に気候変動関連の開示義務を導入することなどが含まれる。

ECBによると、新たな措置は、物価安定の維持という主要な目的に沿って、気候変動に関連するユーロシステムのバランスシートへの金融リスクを低減することを目的としている。さらに、この措置は透明性を高め、経済のグリーンな移行を支援することを目的としている。

ECBの改訂された政策枠組みの下で、中央銀行はユーロシステムの約3億5000万ユーロ(約490億円)の社債ポートフォリオを、温室効果ガスの排出量、炭素削減目標、気候関連の情報開示の観点から評価される、より優れた気候パフォーマンスを持つ発行体に移行する意向である。本プロセスは、時間をかけて償還金を再投資することにより、徐々に行われる予定である。ECBは、2023年第1四半期の時点で、保有する社債の気候関連情報の公表を開始すると表明している。

変更はECBの担保の枠組みにも影響し、ユーロシステムから借入を行う際に担保として使用できる、二酸化炭素排出量の多い企業が発行する資産の割合を制限し、リスク度合いに応じて担保の価値に適用する削減の検討時に気候リスクを組み入れることになる。さらに、2026年以降、市場性のある資産や債務者の信用債権は、EUの次期サステナビリティ報告制度であるCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)に準拠したものでなければ担保として認めないことにしている。

また、ECBは、リスク評価ツールや能力を強化し、気候変動リスクをより適切に取り込むこと、および気候変動リスクの外部評価を改善することを目指すと述べている。リスク評価と管理を改善するための取り組みには、格付け機関と連携して気候変動リスクの格付けへの組み込みに関する透明性を高めることや、各国の中央銀行の内部信用評価システムが気候関連リスクを格付けに含めるための共通の最低基準を設定することが含まれる。

【参照ページ】
(原文)ECB takes further steps to incorporate climate change into its monetary policy operations
(日本語訳)ECB、社債ポートフォリオをより優れた気候変動リスクに対応したものに移行

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