5月24日、オランダ、ベルギー、米国の主要産業クラスター4社は、世界経済フォーラムと協力し、「ネット・ゼロに向けた産業クラスターの移行」イニシアティブを通じて、二酸化炭素排出量の早期削減を目指すと発表した。
2021年11月のCOP26で開始された本イニシアティブは、雇用創出と経済競争力を最大化しながら、削減が困難な産業分野の脱炭素化加速を目的としている。本アプローチでは、地域的に開発されたバスク水素回廊の事例のように、低炭素技術をよりよく実施するための産業間およびクラスター間のパートナーシップの構築と、クラスターの脱炭素化プロジェクトに対する公的資金や混合金融の選択肢へのアクセスに重点を置いている。
今回のイニシアティブの下、世界経済フォーラムは、ナレッジパートナーとしてアクセンチュアおよび電力研究所(EPRI)と緊密に協力し、民間と公共のステークホルダーを結びつけ、個人や集団の脱炭素化目標の達成方法を評価し、新しい実現可能な政策を育成し、地域社会の関与に対する指導と支援を提供する。
石油・ガスの採掘と加工、海運、大型輸送、化学など、これら4つの大規模な産業排出センターは、現在、年間2億9600万トンのCO2排出を占めており、ポーランドの年間排出量よりも多い。また、47万人以上の従業員を抱え、年間国内総生産(GDP)は1,350億ドル(約13兆円)に達している。
4つのクラスターは、英国(Zero Carbon HumberとHynet North West)、オーストラリア(Kwinana Industries Council)、スペイン(Basque Net-Zero Industrial Supercluster)の4つのクラスターとともに、このイニシアティブの最初の立ち上げに参加したものである。各クラスターから提供された指標に基づくと、8つのクラスターすべてが3億3400万トン以上のCO2を削減できる可能性があり、これはフランスの年間排出量に相当する量よりも多くなる。また、110万人の雇用を創出・保護し、地域のGDPに1,820億ドル(約23兆円)を貢献する可能性がある。
産業クラスターは、工業企業が集中している地理的な地域であり、インパクトのある排出削減戦略のターゲットとして魅力的だ。産業資産が互いに近接しているため、インフラ(CO2や水素のパイプライン、再生可能エネルギー資産など)、財務・経営リスク、天然資源や人的資源の共有が可能になる。また、水素や炭素の回収・利用・貯蔵といった新しいグリーンテクノロジーを産業用途に展開・拡大する機会にもなり、排出削減へのシステマティックなアプローチが可能になる。
【参照ページ】
(原文)More Industrial Hubs to Accelerate Their Net-Zero Transition
(日本語訳)ネット・ゼロへの移行を加速する産業拠点が続々登場