5月24日、イングランド銀行(BOE)は、英国の大手銀行および保険会社に対する気候変動による財務リスクの評価を目的としたストレステストである隔年探索シナリオ(BES)演習の結果を発表した。その結果、英国の銀行および保険会社は、気候変動による移行コストや物理的コストを吸収できる可能性が高いが、特に気候変動への対策が不十分または遅延した場合、大きな財務的逆風に直面する可能性があると示された。
また、銀行や保険会社は気候変動のコストの多くを顧客に転嫁する可能性が高く、気候変動の物理的なリスクに弱い家庭や企業が最も大きな打撃を受けるため、消費者や企業が気候変動の負担の多くを負うことになると試験結果によって示された。
本テストでは、金融システムのグリーン化のための中央銀行・監督者ネットワーク(NGFS)が作成したシナリオに基づき、「早期行動」(EA)、「後期行動」(LA)、「追加行動なし」(NAA)の3つのシナリオを用い、ネット・ゼロへの最も効率の良い経路を辿るシナリオと、遅い行動や不十分な行動を追ったシナリオを含む、さまざまな結果に焦点を当てた。
テストの結果、銀行と保険会社は、重大な支払い能力に関わるリスクに直面することなく、気候変動による移行コストと物理的コストを吸収できる可能性が高いことが示された。しかし、気候変動リスクが収益性に与える影響は大きく、損失率は年間平均10~15%の利益圧迫要因になる可能性がある。
本テストが示す損失とリスクの程度は、気候変動対策の時期と範囲によって大きく異なり、対策後期シナリオの銀行の気候変動関連信用損失は、対策初期シナリオよりも30%高くなっている。後期行動シナリオの銀行の損失率は、気候変動リスクの結果として2倍以上になり、1100億ポンド(約18兆円)の損失が追加されると予測された。
行動しないシナリオの損失率は、30年後では、行動後期シナリオよりも低いものの、BOEは、NAAシナリオは、特にテストの時間枠外では、長期的にかなり高いリスクを伴うと指摘している。さらに、アクション・シナリオとは対照的に、NAAシナリオは、組織が利益を移行機会に再投資する機会を提供するものではないという。
【参照ページ】
(原文)Bank of England publishes results of the 2021 Biennial Exploratory Scenario: Financial risks from climate change
(日本語訳)BOE、気候変動における財務リスクを発表