EIOPA、低炭素社会への移行に伴う企業年金セクター向け気候変動ストレステストを開始

EU規制当局、低炭素社会への移行に対する年金基金の耐性を評価する気候変動ストレステストを開始

4月4日、欧州連合(EU)の保険・年金に特化した金融規制機関である欧州保険・職業年金機構(EIOPA)は、低炭素経済への移行に関連するリスクに対する企業年金セクターの回復力のテストを目的とした、初の気候変動ストレステストの開始を発表した。

欧州システミックリスク委員会および欧州中央銀行と共同で開発した今回のストレステストは、政策措置の遅れにより気候ニュートラルへの移行が突然無秩序に行われるというシナリオに対する欧州の職業的退職給付機関(IORPs)の回復力をテストするものだ。本シナリオでは、炭素価格の急上昇により化石燃料価格やエネルギーコストが上昇し、特に炭素集約的なセクターの株式市場が圧迫されると想定している。本シナリオで予想されるその他の影響としては、炭素を排出している産業の企業信用スプレッド上昇や利回り上昇による国債発行コストの上昇、不動産などの有形資産クラスの価値上昇の鈍化などがある。

EIOPAによると、今回のストレステストはサステナビリティと環境リスクマネジメントが長期投資家にとって重要な検討事項となっていることを受けて実施した。EIOPAは12月に、保険会社・再保険会社・企業年金基金のリスク管理手法にサステナビリティリスクを確実に組み込むことを目的とした3ヵ年計画を発表している。この大綱では、ストレステストに加え、持続可能性の開示の促進、グリーンウォッシュを含むESG行為リスクの監督に関するガイダンスの提供、自然災害のモデル化など気候変動リスクに関するオープンソースモデリングとデータの促進などの活動を予定している。

【参照ページ】
(原文)EIOPA launches climate stress test for the European occupational pension sector
(日本語訳)EIOPA、欧州の企業年金セクターを対象とした気候変動ストレステストを開始

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