1月27日、ネスレはサプライチェーンにおける児童労働のリスクに対処するため、カカオ農園の家族に金銭的なインセンティブを提供するプログラムなど、カカオ供給のサステナビリティを高めることを目的とした一連の取り組みを発表した。ネスレは、2030年までに14億ドル(約1,600億円)を投資し、カカオのサステナビリティへの取り組みを拡大する予定だ。
ネスレは「キットカット」や「ネスキック」などの代表的なチョコレートブランドを擁する世界最大級のカカオ消費企業であり、年間約43万トンのカカオを調達しているが、その多くは、過去数十年にわたって児童労働を行ってきたことで有名なガーナやコートジボワールから調達している。同社によると、家族経営のカカオ農園で児童労働が行われている背景には、貧困や気候変動リスクの増大、水・保健・教育・金融サービスへのアクセス不足など、さまざまな要因がある。
ネスレが児童労働のリスクに対処するために開始した重要な取り組みの一つは、農家とその家族がより持続可能なカカオ栽培に移行することを支援することを目的としたインカムアクセラレータープログラムである。2020年に1,000家族を対象に試験的に実施された本プログラムは、時間をかけて社会的・経済的なレジリエンスを着実に構築することを目的とした活動や農法に対して、家族に金銭的なインセンティブを直接与える。
今回のプログラムでは、子どもの就学、作物の生産性を高める適正農業規範の実施、日陰の木の植林など気候変動への耐性を高めるためのアグロフォレストリー活動の実施や他の作物の栽培や家畜の飼育など多様な収入の創出などに対して、年間最大500スイスフラン(約62,000円)を受け取ることができる。本プログラムは2022年には1万世帯に拡大し、2030年までに全世界のカカオサプライチェーンにおいて、16万世帯と推定されるカカオ農家に支援を届けることを目指している。
ネスレは、カカオ製品の生産地から工場までの完全なトレーサビリティーと分別を実現するために、グローバルなカカオ調達の変革を目指していると述べている。2023年の一部のキットカット製品を皮切りに、新しいプログラムで調達したココアを使用した製品を投入する予定だ。
【参照ページ】
(原文)Nestlé announces innovative plan to tackle child labor risks, increase farmer income and achieve full traceability in cocoa
(日本語訳)ネスレ、児童労働リスクへの対応とカカオのトレーサビリティ実現に向けた計画を発表