8月5日、日本銀行は日本の気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた課題を把握する観点から調査を開始していた「気候変動関連の市場機能サーベイ」の結果を公表した。第1回調査では、発行体、投資家、金融機関、格付け会社等663先に調査を依頼し、4割以上の先から回答を得た。
調査結果では、株式市場、社債市場ともに、気候関連リスク・機会は価格にある程度織り込まれているものの、一段の織り込みの余地があるとの見方が示された。また、価格への反映が進むための課題としては、「情報開示の拡充や標準化」、「気候関連データの整備」といった情報のアベイラビリティに関する課題や、「ESG評価の透明性の向上」、「分析方法の充実」といった気候関連リスク・機会の評価手法に関する課題が指摘されている。これらの点は、日本のESG債市場が拡大するための市場整備面の課題でもある。
日本のESG債市場の現状については、その需給環境について、ESG債に強い需要があることが示唆された。また、ESG債の発行動機としては、有利な調達条件よりも、「レピュテーションの向上」や「投資家層の多様化」といった事業・IR戦略上の事由が重視されていること、投資家側の動機としても「社会的・環境的な貢献」が重視されていることが示された。これらのメリットについての認識が発行体・投資家により浸透し、また情報開示の拡充・標準化等により発行や投資判断にかかるコストが低減すれば、発行体や投資家のすそ野が広がり、ESG債市場の活性化に資すると考えられる。
サーベイで確認された情報のアベイラビリティや気候関連リスク・機会の評価手法の充実といった課題については、市場関係者により、さらなる市場の整備に向けた取り組みが進められている。
日本銀行としては、本サーベイについて、内容面の工夫を図りつつ、継続的に実施し、気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた今後の課題に関する情報を提供していくという。また、海外における取り組みもフォローしつつ、気候変動関連の市場機能に関する調査・分析や、市場整備に向けた関係者との対話・連携などを通じて、市場の発展に貢献していく。