こんにちは!ESG Journal Japan編集部です!
ESG投資を行うにあたって、企業がどのようにESGに取り組んでいるかを算出した「ESGスコア」が存在します。
こちらもESG情報開示基準と同様に複数の提供会社が存在し、どのスコアが正しいのか良くわからないといった声がよく聞かれますが、今後はこれらの各スコアをみてESG投資が行われるのがスタンダードになると言われています。
本記事では複数乱立するESGスコアの概観と、現在メジャーと言われているスコア間の相関関係や評価メソドロジーをみていきたいと思います。
ESGスコア提供会社一覧
(出所)SustaiAbility(2020)、各社Webサイトより作成
日本では東洋経済新報社が長くCSRスコアを提供していましたが、近年ではこれをESG投資に利用できるデータとして提供しています。また2020年に「SustainAbility」社がサステナビリティ関連のエキスパートや投資家に対して行ったアンケートによると、投資家によって最も多く利用されているESGスコアはMSCIとSustainalyticsであり、カバー範囲が広いことなどから好まれているようです。また、スコア自体の質や有用性の観点からはCDOやISS、RobecoSAMなどのスコアがサステナビリティ関連の専門家から評価されているとのことです。
ESGスコアの相関関係
上記の通り、様々な期間がスコアを出していますが、実際の所それぞれのスコアは相関しているのでしょうか。ESG投資を重視している日本最大の年金運用期間GPIFはFTSEとMSCIのESGスコアをプロットしたところ、殆ど無相関であり、一方で高いESGスコアを得た銘柄が、もう一方の指数では必ずしも高評価ではなかったと公表しています。
これはやはりメソドロジーが大きく異なることに起因するとみられています。MSCIは業種区分の影響が大きく、各指標が業績にどう直結するかという点を重視して評価しているのに対し、FTSEは統合報告書などの公開情報を基にESGリスクに対する企業の対応を評価しているからだと言われています。
(出所)GPIF「2018年度ESG活動報告」
上記のFTSE・MSCIの比較においては低い相関関係が示されていますが、RobecoSAMやSustainalytics等のESGスコア間の相関係数では0.6を超えている場合もあります。
(出所)湯山智教(2020), ESG投資とパフォーマンス, 57
ESGスコアの相関に影響を与える評価メソドロジー
なぜESGスコアは高い相関関係を示さないのでしょうか。
一般的な評価メソドロジーは①ESGの各分野(環境、社会、ガバナンス)において着目する項目を定めて、②それについて点数付け・評価を実施し、③更にその項目や分野ごとにウェイトを付した上で、④総合的なスコアを算出していく、というプロセスになります。
ただし、①の着目する項目に対して、メソドロジーの観点から、どの項目に着目したのかという点が異なること、さらには②の評価に際してどのように評価したか、という点が異なります。
大きくは2つに分かれ、Bloomberg、FTSE、東洋経済はディスクロージャーの度合いに着目した評価手法であり、MSCI・FTSEは定性的な内容についても評価しているスコアであるため、相関関係にも一定の歪みが生じてしまうのだと思われます。
特にBloomberg開示スコアはESGパフォーマンスを示すESGスコアではなく、ESG情報の開示の度合いを示すESG開示スコアと分類されており、客観的に計測できることから恣意性を一定程度排除しやすいというメリットを有する一方で、ESGパフォーマンスそのものには敏感に反応しにくい、というデメリットもあります。
ESGスコアに関する論点と課題
上記でも述べたように、各ESG評価会社が提供するESGスコアの間の関連性が必ずしも高くないことは問題となりえます。各社のESGスコアの基準を統一することはそもそも困難な可能性は高いですが、より透明性を高めたスコアとしていくのは必須でしょう。
特にスコアを決定する過程において、評価機関が用意した独自のアンケートに企業がクローズドに回答するケースが多くあり、今後は公開情報のみで統一的な評価を行うなどの対策が取られるべきです。
また、ESGは非財務情報をメインとして取り扱うため、情報開示の統一性確保そのものもかなりハードルが高いと言えそうです。現状では複数の考え方・スタンダード・ガイドラインが乱立しているため、各開示項目や指標について、共通するところはそろえ、異なることは違いを明確化していく、といった意味での「整合性」の向上が必要と言えそうです。
ESGに優れた企業・銘柄をどのように選ぶべきか
最後になりますが、ESGスコアに関わる開示のズレや複数評価機関の乱立を前提とした場合、投資家側はどのような手法を用いてESG要素に優れた銘柄を選べばよいのでしょうか。
①ESGスコアを用いようとする場合にはそのスコアの特徴を認識した上で活用する
② 複数スコアを用いたスクリーニングや、スコアにウェイトをつけた評価を作成する
③ESGスコアを用いずに、前提となっている生データのみで独自判断する(例:二酸化炭素排出量・取締役の比率等)
どのようなやり方が優れているかは分かりませんが、信用格付のようなしっかりと仕組みがない現状では、上記①〜③のようなやり方を複合的に用いるのが良いと思われます。
最後に
ESG投資をする際に投資家等が重視する「ESGスコア」についてまとめましたがいかがでしたでしょうか。日本ではESG投資におけるスコアの正しい利用法がまだまだ浸透しておらず、低いスコアの企業を盲目的にポートフォリオから外す、というケースもよく聞きます。今後は更に各スコアを深掘って、皆様のお役に立てるような分析記事を出せればと考えています。
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次回も上場企業のESG開示やESGの最新トレンドについて、詳しく紹介していきたいと思います。
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