「地域脱炭素ロードマップ」を公表、2030年に100自治体でカーボンゼロ実現目指す
2050年脱炭素社会の実現に向けた検討を行っていた「国・地方脱炭素実現会議」が取りまとめた「地域脱炭素ロードマップ」が公表された。
ロードマップでは、2030年度までに集中して行う施策などを提示し、今後5年間で政策を総動員して取り組みを加速し、2030年度までに少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」(温室効果ガス実質ゼロ地域)を設置して、ノウハウや人材を他地域に横展開していくこと、脱炭素の基盤となる重点対策として、「自家消費型太陽光」や「省エネ住宅」などを全国で増やしていくことなどが盛り込まれた。
脱炭素の基盤となる重点対策としては、下記の8つが盛り込まれている。
①屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
建物の屋根等に設置し屋内・電動車で自家消費する太陽光発電を導入する。自家消費型の太陽光発電は、系統制約や土地造成の環境負荷等の課題が小さく、低圧需要では系統電力より安いケースも増えつつある。余剰が発生すれば域内外で有効利用することも可能であり、蓄エネ設備と組み合わせることで災害時や悪天候時の非常用電源を確保することができる。
②地域共生・地域裨益型再エネの立地
一次産業と再エネの組合せ、土地の有効活用、地元企業による施工、収益の地域への還流、災害時の電力供給など、地域の環境・生活と共生し、地域の社会経済に裨益する再エネの開発立地を、できるだけ費用効率的に行う。そのために、市町村は、地域の再エネポテンシャルを最大限活かす導入目標を設定し、公共用地の管理者や農業委員会等と連携し、再エネ促進区域の選定(ポジティブゾーニング)、環境配慮や地域貢献の要件の設定や地域協議会の開催等を主体的に進める。
③公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
庁舎や学校等の公共施設を始めとする業務ビル等において、省エネの徹底や電化を進めつつ、二酸化炭素排出係数が低い小売電気事業者と契約する環境配慮契約を実施するとともに、再エネ設備や再エネ電気を、共同入札やリバースオークション方式も活用しつつ費用効率的に調達する。あわせて、業務ビル等の更新・改修に際しては、2050 年まで継続的に供用されることを想定して、省エネ性能の向上を図り、レジリエンス向上も兼ねて、創エネ(再エネ)設備や蓄エネ設備(EV/PHEV を含む)を導入し、ZEB 化を推進する。
④住宅・建築物の省エネ性能等の向上
地域の住宅・建築物の供給事業者が主役になって、家庭の最大の排出源の一つである冷暖房の省エネ(CO2削減)と、健康で快適な住まいの確保のために、住宅の断熱性等の省エネ性能や気密性の向上を図る。住宅の再エネ・創エネ設備や、蓄エネ設備(EV/PHEV を含む。)は、ネットワーク化することで需給調整に活用でき、地域のレジリエンス強化にも資する。
⑤再エネ電力とEV/PHEV/FCVを活用するゼロカーボン・ドライブ
再エネ電力と EV/PHEV/FCV を活用する「ゼロカーボン・ドライブ」を普及させ、自動車による移動を脱炭素化する。動く蓄電池等として定置用蓄電池を代替して自家発再エネ比率を向上し、災害時には非常用電源として活用し地域のエネルギーレジリエンスを向上させる。
⑥資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
プラスチック資源の分別収集等、食品ロス削減推進計画に基づく食品ロス半減、食品リサイクル、家庭ごみ有料化の検討・実施、有機廃棄物等の地域資源としての活用、廃棄物処理の広域化・集約的な処理等を、地域で実践する。
⑦コンパクト・プラス・ネットワーク等による脱炭素型まちづくり
都市のコンパクト化やゆとりとにぎわいあるウォーカブルな空間の形成等により車中心から人中心の空間へ転換するとともに、これと連携した公共交通の脱炭素化と更なる利用促進を図るとともに、併せて、都市内のエリア単位の脱炭素化に向けて包括的に取り組む。加えて、スマートシティの社会実装化や、デジタル技術の活用等を通じて都市アセットの機能・価値を高め、その最大限の利活用を図る。さらにグリーンインフラや Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災)等を推進する。
⑧食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立
調達、生産、加工・流通、消費のサプライチェーン全体において、環境負荷軽減や地域資源の最大活用、労働生産性の向上を図り、持続可能な食料システムを構築する。
・持続可能な資材やエネルギーの調達(営農型太陽光発電、バイオマス・小水力発電、地産地消型バイオガス発電施設の導入等)
・地域の未利用資源の一層の活用(園芸施設における産業廃熱・CO2の利用、バイオ炭の農地施用、堆肥の広域流通等)
・持続的生産体系への転換(ドローンによるピンポイント農薬・肥料散布の普及、農機のシェアリングや農業支援サービスの育成・普及、有機農業の推進等)
・持続可能な加工・流通システムの確立(商品・物流情報データの共有・連携、余剰・未利用農産物の再利用)
・環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進(見た目重視から持続性重視への転換、消費者と生産者の交流)
・適切な間伐やエリートツリー等を活用した再造林等の森林整備
・建築物の木造化・木質化等による地域材の積極的な利用
【参照ページ】
国・地方脱炭素実現会議
首相官邸 国・地方脱炭素実現会議