
10月13日、スウェーデンの鉄鋼スタートアップStegraは、同国ボーデンで建設中の世界初となる大規模グリーンスチール(脱炭素鉄鋼)工場の資金確保に向け、新たな資金調達ラウンドを開始した。同社はすでに既存投資家から強いコミットメントを得ており、プロジェクトの進捗を加速させる狙いだ。
Stegraのであるヘンリク・ヘンリクソンCEOは、「創業メンバーやリード投資家による強力な支援は、Stegraのビジネスモデルの確かさを改めて示すものだ。Stegraは堅実な受注残、競争力のあるコスト構造、そして実行力を兼ね備え、グリーンスチール分野で独自の地位を築いている」と述べた。
今回の資金調達により、Stegraはプロジェクト全体の資金の約15%を確保する見通しで、内容は新規株式発行、借入、アウトソーシング契約、戦略的パートナーシップなどの組み合わせになるという。すでに株式投資家から初期コミットメントを得ており、現在はアウトソーシングに関する詳細な協議も進めている。
ヘンリクソンは、「プロジェクトの60%以上がすでに進行しており、完了までの明確な工程表と詳細な計画を持っている。追加スコープに対応するために3カ月のスケジュール延長を行ったが、今回の資金調達により、さらなる推進力を得てプロジェクトを完遂できる」と述べた。
本ラウンドの目的は、プロジェクトの追加スコープに対応する資金を確保することにある。具体的には、当初外部資金で賄う予定だった鉄道および港湾インフラの投資をStegraが自社で引き受ける形に切り替える。これにより、プロジェクト計画の進行管理と実施のコントロールを強化できるという。また、全体的な資材・建設・設置コストの上昇への対応や、EU委員会の承認を得ながらも未実行となっている州補助金の補填、そして財務的な安全バッファの確保も含まれる。
Stegraのグリーンスチール事業は、水素還元技術を活用し、従来の高炉製鉄と比較して大幅な二酸化炭素削減を実現する。ボーデン工場は、欧州における「化石燃料ゼロの鉄鋼生産」の象徴的プロジェクトとされており、完成後は自動車メーカーや建設業界向けに脱炭素鋼材を供給する計画だ。
欧州では鉄鋼業がCO₂排出量全体の約7%を占める中、Stegraの動きは産業全体の脱炭素化を象徴する重要な一歩となる。今回の資金調達は、単なる工場建設のための資金確保にとどまらず、持続可能な産業基盤を構築するための「次世代鉄鋼モデル」への実践的な挑戦といえる。