UNEPとS&P Global Sustainable1、新ネイチャー・リスク・プロファイルの手法を発表
1月17日、国連環境計画(UNEP)とS&Pグローバルはダボス会議にて、企業が自然に与える影響と依存性を分析するための新しい手法であるネイチャー・リスク・プロファイルの提供を開始したことを発表した。
ネイチャー・リスク・プロファイルは、自然への影響と依存に関する科学的で実用的な分析を提供することにより、金融セクターが自然関連リスクを測定し、対処できるようにする。
世界のGDPの半分が自然に大きく依存している中、世界のビジネスリーダーの間で生物多様性の損失への懸念が高まっている。世界経済フォーラムの2023年グローバルリスクレポートによると、生物多様性の損失は、気候変動対策の失敗、気候変動への適応、異常気象に次いで、今後10年間で4番目に深刻なグローバルリスクであるとされている。
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市場参加者は、自社の事業やポートフォリオの生物多様性への影響や依存度を測定し、リスクを軽減し、レジリエンスを構築するために自然にとってプラスとなる成果を推進するための信頼性の高い定量的アプローチを必要としている。
新しい方法論は、企業や投資家が自然関連のエクスポージャーを特定・定量化することを可能にする指標とデータの概要を示している。本手法は、企業が生物多様性に与える影響から生じるリスク、企業が生物多様性に依存することから生じるリスク、生物多様性の高い地域に近接していることによる潜在的リスクなど、いくつかの重要な分野を対象としている。
ネイチャー・リスク・プロファイルの手法は、2022年12月の「昆明-モントリオール生物多様性グローバルフレームワーク」の採択に続いて発表された。生物多様性グローバル・フレームワークには、企業が生物多様性に関するリスク、依存関係、影響を定期的に監視、評価し、透明性をもって開示することを奨励し、可能にするための法的、行政的または政策的措置を政府が講じるという目標が盛り込まれている。さらに各国政府は、これらの要求事項を、すべての大企業、多国籍企業、金融機関、およびそれらの事業、サプライチェーン、バリューチェーン、ポートフォリオに適用することに合意した。
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ネイチャー・リスク・プロファイルの手法がもたらす潜在的な影響は大きく、金融の意思決定のパラメータを一変させる。自然保護、ビジネス、金融の各分野の専門家によって開発されたこの手法は、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の新しいアプローチに合致し、TNFDの開示フレームワークの実施を支援する。
本方法論により、ユーザーは企業レベルの情報とベストプラクティスの自然関連データを組み合わせて、重要なリスク指標を計算できる。これは、Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposureデータベースや、開発中のEcosystem Integrity Indexなど、科学的根拠に基づく強力なインパクトおよび依存性測定ツールの使用を中心に構築されている。
S&P Global Sustainable1はまた、新しい知識コミュニティーを立ち上げ、投資マネージャー・保険会社・企業・非営利団体その他に、自然にとってプラスとなる結果への資本のシフトを加速させるための手法をさらに発展させる方法について協力を呼びかけている。本プログラムは、国連環境計画世界自然保護モニタリングセンター(UNEP-WCMC)とパートナーによって監修された地理空間上の生物多様性データセットと、S&Pグローバルが持つ地域の事業活動に関する詳細な情報を組み合わせて、TNFDフレームワークのプロセスの実践を支援する。
【参照ページ】
(原文)UNEP and S&P Global Sustainable1 launch new nature risk profile methodology
(日本語参考訳)UNEPとS&P Global Sustainable1、新しい自然リスク・プロファイルの手法を発表