気候変動に関する情報開示「TCFD」と日本の賛同企業

こんにちは!ESG Journal Japan編集部です!本日もESG関連のオリジナルコラムをお送りします。本日は「TCFD」について取り上げます。皆様も最近新聞やメディア等で良く目にするワードではないでしょうか。

企業の長期的な成長のためには、利益追求だけでなく環境や社会とのかかわりが重要であるという考え方が日本でも十分に浸透してきています。最近では、そうした企業の活動を金融面から促そうと、投資家が環境・社会・ガバナンスの3つの要素を織り込んで投資先を選ぶ、いわゆる「ESG投資」が注目を集めています。

特にその中でもE(環境)の部分において、2015年に「金融安定理事会(FSB; Financial Stability Board)」により、気候変動に関する企業の対応を情報開示するよう促す「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が設置されました。

金融安定理事会(FSB)とは

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは

G20の要請を受け、2015年に金融安定理事会により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指す。

出所:TCFDコンソーシアム、大和証券「乱立するESG情報の開示基準とその現状」(2021年1月21日)

TCFDは2017年6月に報告書を公表し、企業や金融機関に財務に影響を及ぼす気候関連の情報を開示するように促しました。具体的には以下の項目について、気候変動に関するリスクと機会に関して、投資家などに明らかにするように求めています。

①ガバナンス:どんな体制で検討し、それを企業経営に反映しているか
②戦略:企業経営への評価をどのように考えるか
③リスク管理:どのように特定、評価し、低減しようとしているのか
④指標と目標:どのような指標でリスクと機会を判断し、進捗を評価しているか

政府として世界初の「TCFDガイダンス」作成

このような気候変動への対応に関して企業に情報開示を求める機運の高まりは、日本ではどのように捉えられたのでしょうか。

求められている情報の開示については、これまで日本企業はあまり積極的でありませんでした。そのため金融機関からは、「将来への投資情報」など事業戦略の開示が不十分だという声もあがっていました。

そこで、経済産業省では、2018年8月に「グリーンファイナンスと企業の情報開示の在り方に関する『TCFD研究会』」を立ち上げました。研究会では産業界や金融界の有識者が集まり、日本企業からの情報発信をさらに推し進めるべく、TCFD提言にもとづいた企業の情報開示のあり方について議論を行ったそうです。

グリーンファイナンスと企業の情報開示の在り方に関する「TCFD研究会」 (METI/経済産業省)

更にこれらの議論をもとに、「TCFDガイダンス」が2018年末に策定されました。企業がTCFD提言にもとづく情報開示を進めることで、投資家などが企業の取り組みに資金を提供し、リターンを得ていくという「環境と成長の好循環」の実現を目指していくための手引きです。これは、政府機関が出すTCFDガイダンスとしては世界初のものです

ガイダンスでは、情報開示の方法や進め方などに加え、業種ごとにどのように戦略を示し、情報開示に取り組んでいけばよいかを解説しています。たとえば自動車産業では、製造時の温室効果ガス(GHG)の排出量より、走行時の排出量のほうが大きくなるため、走行時のGHG排出削減につながる車種の技術開発情報などが「開示推奨項目」としてあげられています。

TCFDガイダンス2.0が公表されました (METI/経済産業省)

TCFDの賛同機関数とその推移

国を主体とする上記の取り組みの結果、日本の賛同企業・機関数は世界1位となっており、年々拡大し続けています。

TCFDに賛同することで、気候変動に対する取り組みを外部にアピールでき、それらの取り組みに対する金融機関からの認知度向上や対話の充実化につながることなどが考えられます。賛同によって特別な義務を負うことはなく、できることから開示すればよいことになっていい点も企業にとって受け入れやすいといえます。非財務情報と財務情報を合わせた「統合報告書」などをすでに発行していれば、それを情報開示媒体として活用する方法もあります。

さらに、TCFDに賛同する企業や金融機関が集まり、民間主導でTCFDへの対応を推進していくための組織として「TCFDコンソーシアム」が設立され、2019年5月27日に設立総会が催されました。経済産業省は金融庁、環境省とともに、このコンソーシアムにオブザーバーとして参加しています。

画像1

出所:TCFDコンソーシアム(2021年4月26日時点)、経産省

国内TCFD加盟企業

最後に、ご参考までに現在日本でTCFDに加盟している企業を以下に記載します。
※TDFCコンソーシアムのHP上で確認できた約300企業のみ掲載

株式会社IHI
株式会社あおぞら銀行
アサヒグループホールディングス株式会社
朝日ライフ アセットマネジメント株式会社
アスクル株式会社
アズビル株式会社
渥美坂井法律事務所
アムンディ・ジャパン株式会社
ERM-Environmental Resources Management
いすゞ自動車株式会社
伊藤忠商事株式会社
株式会社伊予銀行
ANZ証券株式会社
エーザイ株式会社
ADインベストメント・マネジメント株式会社
SGホールディングス株式会社
ENEOSホールディングス株式会社
MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社
株式会社エンビプロ・ホールディングス
応用地質株式会社
大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社
株式会社大林組
株式会社オカムラ
沖縄電力株式会社
オムロン株式会社
オリックス・アセットマネジメント株式会社
株式会社海外需要開拓支援機構
花王株式会社
株式会社格付投資情報センター
カルビー株式会社
川崎重工業株式会社
一般社団法人 環境不動産普及促進機構
株式会社かんぽ生命保険
株式会社九州フィナンシャルグループ
京都大学イノベーションキャピタル株式会社
株式会社クラレ
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構
株式会社グリッド&ファイナンス・アドバイザーズ
クレディ・アグリコル証券会社
株式会社建設技術研究所
株式会社コーセー
国際航業株式会社
コニカミノルタ株式会社
株式会社小松製作所
公益財団法人笹川平和財団
国立研究開発法人産業技術総合研究所
サンメッセ株式会社
株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション
株式会社J-オイルミルズ
J.フロントリテイリング株式会社
四国電力株式会社
株式会社資生堂
シティグループ証券株式会社
清水建設株式会社
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
株式会社商船三井
昭和電工株式会社
信越化学工業株式会社
信金中央金庫
株式会社新日本科学
スズキ株式会社
住友化学株式会社
住友商事株式会社
住友不動産株式会社
セイコーエプソン株式会社
積水化学工業株式会社
セコム株式会社
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
双日株式会社
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社
ソフトバンク株式会社
SOMPOホールディングス株式会社
第一生命ホールディングス株式会社
大樹生命保険株式会社
大東建託株式会社
株式会社ダイフク
大和アセットマネジメント株式会社
大和ハウス工業株式会社
高砂熱学工業株式会社
株式会社ダスキン
株式会社千葉銀行
株式会社チャレナジー
独立行政法人中小企業基盤整備機構
ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社
株式会社T&Dホールディングス
デロイト トーマツ グループ
電源開発株式会社
東亞合成株式会社
東急建設株式会社
東京エレクトロン株式会社
東京海上ホールディングス株式会社
東京製鐵株式会社
東京建物株式会社
一般社団法人投資信託協会
東邦ガス株式会社
東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社
東洋紡株式会社
TOTO株式会社
凸版印刷株式会社
トヨタ自動車株式会社
豊田通商株式会社
西村あさひ法律事務所
日興アセットマネジメント株式会社
日清オイリオグループ株式会社
ニッセイアセットマネジメント株式会社
一般社団法人日本経済団体連合会
株式会社日本政策金融公庫
日本ゼオン株式会社
日本特殊陶業株式会社
日本ハム株式会社
日本郵政株式会社
日本ガイシ株式会社
一般財団法人日本気象協会
日本証券業協会
株式会社日本政策投資銀行
一般社団法人日本損害保険協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人日本貿易会
日本ユニシス株式会社
株式会社ニューラル
野村アセットマネジメント株式会社
野村不動産投資顧問株式会社
野村ホールディングス株式会社
株式会社八十二銀行
浜松ホトニクス株式会社
BNPパリバ銀行
PJPEye株式会社
東日本旅客鉄道株式会社
ヒューリック株式会社
株式会社ファミリーマート
フィデリティ投信株式会社
富国生命投資顧問株式会社
株式会社フジクラ
富士通株式会社
富士フイルムホールディングス株式会社
ブラザー工業株式会社
株式会社ブリヂストン
古河電気工業株式会社
ペプチドリーム株式会社
北越コーポレーション株式会社
北陸電力株式会社
マツダ株式会社
マブチモーター株式会社
丸紅株式会社
三井化学株式会社
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
三井不動産株式会社
株式会社三菱ケミカルホールディングス
三菱重工業株式会社
三菱電機株式会社
三菱UFJ信託銀行株式会社
株式会社民間資金等活用事業推進機構
明治ホールディングス株式会社
明治安田生命保険相互会社
メリルリンチ日本証券
森永乳業株式会社
株式会社安川電機
株式会社ユーグレナ
Unicharm株式会社
ライオン株式会社
リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社
リクソー投信株式会社
リコーリース株式会社
リンナイ株式会社
株式会社ローソン
YKK AP株式会社
アイシン精機株式会社
旭化成株式会社
朝日生命保険相互会社
味の素株式会社
有限責任あずさ監査法人
アセットマネジメントOne株式会社
アミタホールディングス株式会社
アライアンス・バーンスタイン株式会社
EY新日本有限責任監査法人
出光興産株式会社
イビデン株式会社
インベスコ・アセット・マネジメント株式会社
ANAホールディングス株式会社
AGC株式会社
S&P Global
株式会社エッジ・ インターナショナル
株式会社荏原製作所
MU投資顧問株式会社
王子ホールディングス株式会社
大阪ガス株式会社
オーストラリア・ニュージーランド銀行
株式会社オープンハウス
沖電気工業株式会社
小野薬品工業株式会社
オリックス株式会社
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構
国立研究科学法人科学技術振興機構
鹿島建設株式会社
川崎汽船株式会社
一般社団法人環境金融研究機構
関西電力株式会社
九州電力株式会社
九州旅客鉄道株式会社
キリンホールディングス株式会社
株式会社グリーン・パシフィック
栗田工業株式会社
クレディ・アグリコル銀行
株式会社群馬銀行
株式会社神戸製鋼所
株式会社国際協力銀行
コスモエネルギーホールディングス株式会社
小林製薬株式会社
株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ
サッポロホールディングス株式会社
サントリーホールディングス株式会社
CSRデザイン環境投資顧問株式会社
JFEホールディングス株式会社
株式会社ジェイテクト
株式会社滋賀銀行
株式会社静岡銀行
シチズン時計株式会社
株式会社島津製作所
ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント株式会社
株式会社商工組合中央金庫
学校法人上智学院
一般財団法人食品産業センター
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社新生銀行
スイス再保険
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
住友金属鉱山株式会社
住友生命保険相互会社
住友林業株式会社
一般社団法人生命保険協会
積水ハウス株式会社
Zホールディングス株式会社
一般社団法人全国銀行協会
ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店
ソニー株式会社
SOMPOアセットマネジメント株式会社
第一三共株式会社
ダイキン工業株式会社
大成建設株式会社
大日本印刷株式会社
太平洋セメント株式会社
株式会社大和証券グループ本社
高砂香料工業株式会社
株式会社竹中工務店
株式会社地域経済活性化支援機構
一般社団法人全国地方銀行協会
中国電力株式会社
中部電力株式会社
DIC株式会社
帝人グループ
デンカ株式会社
株式会社デンソー
東急株式会社
東急不動産ホールディングス株式会社
東京海上アセットマネジメント株式会社
東京ガス株式会社
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社
東京電力ホールディングス株式会社
株式会社東芝
株式会社東邦銀行
東北電力株式会社
東レ株式会社
戸田建設株式会社
豊田合成株式会社
株式会社豊田自動織機
株式会社ニコン
株式会社ニチレイ
日産自動車株式会社
日清食品ホールディングス株式会社
一般財団法人日本海事協会
日本酸素ホールディングス株式会社
日本製鉄株式会社
日本電気株式会社
株式会社日本取引所グループ
株式会社日本貿易保険
日本郵船株式会社
株式会社日本格付研究所
日本公認会計士協会
日本精工株式会社
日本生命保険相互会社
日本たばこ産業株式会社
日本ビルファンドマネジメント株式会社
独立行政法人日本貿易振興機構
ニューバーガー・バーマン株式会社
農林中央金庫
株式会社野村総合研究所
野村不動産ホールディングス株式会社
パシフィックコンサルタンツ株式会社
パナソニック株式会社
BNPパリバ・アセットマネジメント株式会社
BNPパリバ証券株式会社
PwCサステナビリティ合同会社
株式会社日立製作所
株式会社広島銀行
株式会社ファンケル
合同会社427Japan
富国生命保険相互会社
不二製油グループ本社株式会社
富士電機株式会社
芙蓉総合リース株式会社
ブラックロック・ジャパン株式会社
ブルームバーグ・エル・ピー
株式会社ベネッセホールディングス
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
株式会社ほくほくフィナンシャルグループ
北海道電力株式会社
マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社
株式会社丸井グループ
株式会社みずほフィナンシャルグループ
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
三井物産株式会社
三菱ガス化学株式会社
三菱地所株式会社
三菱商事株式会社
三菱マテリアル株式会社
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
Moody’s Corporation
明治安田アセットマネジメント株式会社
株式会社明電舎
株式会社メンバーズ
森・濱田松本法律事務所
ヤマハ発動機株式会社
株式会社ゆうちょ銀行
横河電機株式会社
ラクスル株式会社
株式会社LIXILグループ
株式会社リコー
株式会社りそなホールディングス
ルネサス エレクトロニクス株式会社
YKK株式会社出所:TCFDコンソーシアム

最後に

TCFDに関して皆様のご理解は進んだでしょうか。各企業ごとにTCFDに沿ってどのような開示を行っているかも別記事で解説していますので、是非そちらもご覧いただければと考えています。

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次回も上場企業のESG開示やESGの最新トレンドについて、詳しく紹介していきたいと思います。

それではまた!

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