
EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)簡素化案を欧州議会が採択
9月10日、欧州議会は、炭素国境調整メカニズム(CBAM)に関する簡素化の改正案を賛成多数で採択した。今後、欧州理事会の承認を経て、EU官報に掲載されてから3日後に発効する見通しである。今回の改正は簡素化パッケージの一部として位置づけられている。
採択された改正内容(主なポイント)
- 年間50トン未満の輸入はCBAMの対象外、全輸入業者の約90%が免除対象
- 鉄鋼、アルミニウム、セメントの輸入におけるCO2排出量の99%は対象として維持
- 認可手続き、排出量算定、検証ルール、申告者の責任範囲などをCBAMの対象輸入品に関する手続きも簡素化
CBAMとは
CBAMとは「Carbon Border Adjustment Mechanism(炭素国境調整メカニズム)」の略称であり、EU排出量取引制度(ETS)で課される炭素価格を、輸入品にも反映させる制度である。この制度の目的には、「カーボンリーケージ」を防止することがある。カーボンリーケージとは、炭素価格による輸入品と価格差による市場での優位性を失うことである。EU内では、環境規制が少ない国からの輸入品には炭素価格が上乗せされていないため、安価になることがあるため価格差が出てしまう。こうした価格差を少しでも縮めるために導入される予定がCBAMである。
2023年10月からは報告義務が始まっており、2026年からは本格的に排出量に応じた証書購入が求められる予定である。また、2026年初頭からは、対象を他のETSセクター(エネルギー、運輸など)への拡大や輸出企業支援策についても検討を開始する予定だ。
日本への影響
鉄鋼やアルミニウムといった製造業が主な対象になる可能性がある。また、EUとの取引がある企業にとっては、取引先から排出量データの開示や算定方法の透明性を求められる場合があると考える。
今後、EUが対象範囲を拡大する可能性があるため、サプライチェーン全体での排出量管理体制を整備しておくことが重要だ。
CBAMは国際的なの脱炭素への取り組みを実践的にするための制度であるとも言える。今後も、国際的な炭素価格制度の流れを踏まえ、必要な情報開示やデータ整備に取り組む姿勢が求められている。
(原文)CBAM: Parliament adopts simplifications to the EU carbon leakage instrument
(日本語参考訳)CBAM:議会はEUの炭素リーケージ制度の簡素化を採択