
6月18日、米国の先進原子力企業TerraPowerは、6億5,000万ドル(約1,000億円)の資金調達を完了したと発表した。本ラウンドには、同社創業者であるビル・ゲイツやHD現代に加え、エヌビディアのベンチャー部門NVenturesなどが新たに参加。核融合や新型炉開発に注目が集まる中、同社の革新性と事業性に対する市場の信頼が裏付けられた格好だ。
今回の資金は、テラパワーが開発するナトリウム冷却型高速炉「Natrium®」の商業化に向けて活用される。同炉は、原子炉とギガワット級のエネルギー貯蔵システムを組み合わせることで、再生可能エネルギーとの親和性を高め、運転の柔軟性とコスト競争力の両立を目指す。米国で建設中の第1号機は、同国初の商業用先進原子力発電所となる見通しで、現在は非核施設の建設が進行中である。来年中には原子炉本体に関する規制当局の承認が見込まれている。
NVenturesを率いるMohamed Siddeekは、「AIの普及とともに電力需要が高まる中、原子力は持続可能なエネルギー源としての重要性を増している。TerraPowerの技術はその鍵を握る」と述べ、脱炭素かつ高効率な次世代電源への期待を示した。
テラパワーは引き続き非上場企業として運営され、今後はNatrium炉の量産化と海外展開も視野に入れている。エネルギー安全保障や電力の安定供給が国際的課題となる中、米政権も新型原子力の導入支援を強化しており、同社の動向は業界内外から注目を集めている。