
5月29日、オランダの資産運用大手APGは、年金基金ABPを代表して、持続可能な航空燃料(SAF)を生産するSkyNRGに最大2億5000万ユーロ(約420億円)を投資することを決定した。世界的なSAFの開発・普及を後押しし、航空業界の脱炭素化を加速させる狙いである。
投資された資金は、SkyNRGのプラットフォーム拡大や、オランダ北部デルフザイルにおける同社初となるSAF生産工場の建設に充てられる。新工場は2028年の稼働開始を目指し、年間約12万トンのSAFを生産する計画である。同施設では、一般的な廃食用油や新たに生産される植物油を使わず、これまで焼却されていた低品質の油脂や廃棄物を主に原料とする方針だ。さらに、再生可能電力とグリーン水素、回収した二酸化炭素を使って合成する次世代燃料「eSAF」の開発にも取り組む。
国際航空運送協会(IATA)によると、航空業界は全世界のCO2排出量の約2.5%を占めており、産業全体のネットゼロ実現に向け、SAFへの期待が高まっている。APGインフラストラクチャー部門のヤン・ヤコブ・ファン・ウルフテン・パルテ氏は「SAFは既存の航空機や給油インフラと互換性があり、化石由来のジェット燃料に代わる現実的な選択肢である」と強調する。加えて、「SAFはライフサイクル全体で化石燃料と比べ、最低でも80%のCO2排出削減が可能だ」と述べている。
SkyNRGは2009年の設立以来、30社を超える航空会社にSAFを供給しており、2011年には世界初の商業用SAFフライトを実現した実績も持つ。今回のデルフザイル工場は、既にいくつかの航空会社とSAF引取り契約を締結しており、この施設によりEUが定めた「ReFuelEU Aviation」規則の2030年6%、2050年70%のSAF使用目標の達成に貢献するとみられる。
SAFの主な原料となる廃油や低品質油には限界もある。SkyNRGでは、自動車塗装工場などで利用された廃油など、これまで活用が難しかった素材を原料とすることで新たな供給源を開拓している。ただし、これだけでは航空産業全体の燃料需要を賄いきれないのが現状だ。このため同社は、合成燃料eSAFの開発にも力を入れており、スウェーデンで実証プロジェクト「SkyKraft」にも着手している。
eSAFは将来的な本命とされているが、現時点では高コストが課題だ。従来のジェット燃料の4~5倍、eSAFは最大10倍のコストがかかるとされる。それでも、再生可能電力やCO2回収技術の進展により、今後はeSAFが主流になる可能性があるとファン・ウルフテン・パルテ氏は展望する。
今回の投資案件は規制当局の承認を経て、2025年後半にも完了する見込みである。
(原文)APG invests in SkyNRG to accelerate the production of sustainable aviation fuels
(日本語参考訳)APG社、持続可能な航空燃料の生産を加速するためSkyNRG社に投資