
5月2日、欧州証券市場監督局(ESMA)は、ESG評価機関に関する新たな規制技術基準(RTS)案を発表し、同案についての意見募集を開始した。これは、2024年末に発効したESG評価機関規則(EU Regulation 2023/2631)に基づく初の技術的詳細の提示であり、ESG評価の信頼性・比較可能性を高めることを目的としている。
今回提示されたRTS案は、以下の3つの主要分野を対象としている:
- 認可・認定申請時に提出すべき情報の明確化 評価機関が監督当局に提出すべき事業情報・組織体制・方法論の開示内容を詳細に規定しており、透明性の向上と審査の一貫性確保を狙う。
- 利益相反の管理体制 ESG評価に加えてコンサルティング業務や金融サービスを提供する機関については、利益相反のリスクが高いとされる。RTS案では、これらの機関に対し、業務の分離や独立性確保のための具体的な組織的措置や手続き導入を求めている。
- 利用者・発行体・公衆への情報開示要件 評価方法やデータソース、評価対象の選定基準、スコア変更の根拠など、利用者が意思決定に活用できる詳細情報の開示が義務づけられる。加えて、評価対象企業に対する事前通知や異議申し立ての機会の確保も求められる。
ESMAはこのRTS案に対する意見を2025年6月20日まで募集しており、同年10月に欧州委員会へ最終報告書とRTS案を提出する予定である。特に、今後登録申請を予定している評価機関、ESG評価を利用する投資家や評価対象企業などに対して積極的な参加を呼びかけている。
この取り組みは、ESMAが提示したESG評価市場の課題である、手法の不透明性、評価の一貫性欠如、利益相反の懸念への対応策と位置づけられ、EU全体の持続可能金融市場の信頼性確保に向けた重要な一歩となる。