EY、投資家のサステナビリティに対する視野が狭まり、短期的な業績に重点を置く傾向を指摘

12月10日、EYが新たな調査結果を発表し、世界の投資家コミュニティで、気候変動やサステナビリティに対する視野が狭まり、短期的な業績に重点を置く傾向が広がっており、ESG投資の長期的な利益が軽視されている現状を示した。

この調査は11年目であり、世界中の資産運用会社、資産管理会社、保険会社、年金基金を含む350人の意思決定者の意見を収集し、サステナビリティが投資戦略にどの程度組み込まれているか、またサステナビリティ報告が投資判断にどのように活用されているかを探った。

調査結果によれば、投資家はESGの重要性を強調するものの、その実際の行動には大きなギャップがあることが示された。調査対象者の88%が過去1年間でESG情報をより多く活用していると答えた一方で、92%が短期的な業績を犠牲にしてまでESG投資の長期的な利益を追求する価値はないと考えている。また、66%が今後数年間でESGの考慮が投資選択において重要性を失う可能性があると予測している。

非財務的なパフォーマンスを考慮する場合でも、投資家は長期的な影響よりも短期的な影響を重視する傾向がある。ESGの長期的影響を評価できると答えたのは25%にとどまり、57%は短期的影響を評価する能力があると答えている。また、気候変動が投資戦略に影響を与えると考える投資家はわずか55%で、63%が主にビジネスサイクルの変化、62%が貿易制限や関税の変化を重視している。

一方で、93%の投資家が企業がサステナビリティや脱炭素化の目標を達成できると自信を示し、62%が企業の気候変動報告を評価する能力があると答えている。しかし、企業の気候政策の変化をモニターしていると答えたのはわずか17%であり、この自信の根拠には疑問が残る。

さらに、85%の投資家がグリーンウォッシングの問題が5年前より深刻化していると認識しており、36%が非財務報告の進展が不十分だと感じている。80%は報告書が真に重要な内容を明確に示し、他社の報告書と比較しやすくする必要があると考え、64%が企業のサステナビリティ開示に独立した監査を導入する必要性を挙げている。

これらの結果から、投資家コミュニティにおけるESG問題への優先度の低さと、企業が提供するサステナビリティ情報に対する不信感が浮き彫りとなった。

【参照ページ】
(原文)Investors shun long-term ESG rewards in quest for short-term gains

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