11月5日、PwCはEUの企業持続可能性報告指令(CSRD)についての調査結果を発表した。CSRDは発効以降、約50,000の企業に適用され、持続可能性報告の透明性向上を目指している。しかしPwCの調査によると、企業の60%以上がCSRD対応に十分な準備ができていない。特に、データ収集の基盤が整っていない企業が多く、サプライチェーン全体でのデータ整合性確保が主要な課題となっている。また、二重マテリアリティ評価の導入や独立した第三者保証への対応も遅れている。
同調査においてPwCは、CSRDに準拠するために、企業は5段階の実行計画を策定することを推奨している。(1)スコーピングによる二重マテリアリティ評価、(2)データ基盤の整備、(3)ESRSに基づく実際の実施プロセス、(4)独立保証の取得、(5)持続可能性情報の報告である。また同社は、40%の企業がデジタル化されたデータ収集基盤をすでに構築しており、こうした基盤整備が競争優位性の鍵を握るとした。
今後の主な課題として、膨大なデータポイントを迅速かつ正確に収集するためのシステム整備と、第三者保証取得プロセスの効率化を挙げている。特に、サプライチェーン全体での情報収集に注力が必要とされる。また、本調査では、企業の70%以上がESG分野の専門人材不足を課題として挙げており、この人材の確保と育成は、中長期的に企業がCSRDに準拠し続けるための重要な要素であるとした。これらの課題に対応するため、企業は持続可能性報告を単なる規制対応ではなく、戦略的なビジネス機会として捉え、長期的な競争優位性を構築する必要がある。
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(原文)All Hands on Deck: CSRD reporting as the accelerator for sustainable business transformation