ミュンヘン再保険、新中期戦略「アンビション2030」発表

2030年までにROE18%超、株主還元80%超を目標に

12月11日、世界有数の再保険大手ミュンヘン再保険(Munich Re)は11日、新たな複数年戦略「アンビション2030」を発表した。2030年までに自己資本利益率(ROE)18%超、1株当たり利益(EPS)の年平均成長率8%超、株主への総還元率80%超を目指す。収益力のさらなる強化と株主還元の拡大を通じ、同業他社を上回る成長を狙う。

同社は現在進行中の「アンビション2025」について、財務・非財務のすべての目標を達成、あるいは上回る見通しだとしている。2020年に12億ユーロだったグループ純利益は、2025年には約60億ユーロに達する見込みで、事業ポートフォリオの分散により収益の安定性も高まったという。

新戦略「アンビション2030」は、「アウトピーク(Outpeak)」「アウトペース(Outpace)」「アウトパフォーム(Outperform)」の3本柱で構成される。再保険と元受保険を併せ持つ独自のビジネスモデルを強みに、生命・医療再保険(L&H)、グローバル・スペシャルティ保険、ERGO事業の収益比率を高め、景気変動の影響を受けやすい損害再保険(P&C)を補完する。

財務面では、2030年までにソルベンシー比率200%超を維持するほか、利益成長に応じて株主還元を拡大する方針だ。2026年の純利益目標は63億ユーロ、保険収入は640億ユーロを見込む。

事業別では、元受保険子会社ERGOが引き続き成長を牽引する。ドイツ国内事業では価格戦略と業務効率の強化、海外事業では欧州・アジアに加え、米国市場で中小企業向け保険を展開する。2030年までにERGO全体の保険収入は260~300億ユーロに達する見通しだ。

再保険事業では、自然災害リスクへの高い需要を背景に、P&C再保険で市場サイクルを通じた高収益性を維持する方針を示した。L&H再保険では、長寿年金ビジネスの国際展開などにより、技術的利益の拡大を図る。グローバル・スペシャルティ保険分野でも、新市場への参入や商品拡充により収益基盤を広げる。

投資部門では、金利上昇を追い風に、2030年までに投資利回りを3.4~3.8%に引き上げる計画だ。代替投資の拡大や、AIを活用した運用高度化を進める。

非財務面では、気候変動と多様性・包摂(DEI)への取り組みを強化する。2050年までに保険・再保険および投資ポートフォリオ全体で温室効果ガス排出量を実質ゼロとする長期目標を維持し、石炭関連投資の段階的廃止時期を2030年に前倒しする方針を示した。DEIについても、各国・地域の実情に即した新たな目標を設定する。

ミュンヘン再は1880年創業。再保険、元受保険、資産運用を手がけ、2024年の保険収入は608億ユーロ、純利益は57億ユーロ。世界約44,000人の従業員を擁する。今回の新戦略により、同社は2030年に向けて成長と競争力のさらなる強化を図る。

(原文)New multi-year strategy Ambition 2030: Munich Re focuses on sustained profit growth and high profit participation for shareholders

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