米裁判所、SEC気候情報開示規則を一時停止

3月15日、連邦第5巡回区控訴裁判所は、米国証券取引委員会(SEC)が新たに導入した気候変動関連の情報開示規制を一時的に停止する行政停止を認める判決を発表した。これは、企業に気候変動関連のリスクと温室効果ガス(GHG)排出量の報告を義務付ける新ルールの実施に対する一連の異議申し立てへの最新の反応となる。

今回の判決は、油田サービス会社のリバティ・エナジーと、リバティが一部所有するフラックスサンド会社のノマド・プロパントが、規則の見直しが行われるまでの延期を求めた申し立てに対して下されたもの。両社は申立書の中で、SECの最初の提案は「気候政治の世界にSECを巻き込む」ことを目的とし、GHG排出量や気候関連リスクなど「息をのむような量の情報、その多くは極めて推測的なもの」の開示を公開企業に強制するものであると述べている。

SECは今月上旬、新ルールの公表と採用を発表した。これは、SECが最初に草案を公表してから2年後のことで、米国内の上場企業に対し、事業が直面する気候変動リスク、そのリスクへの対処計画、悪天候による財務的影響、場合によっては事業活動から排出されるGHGに関する情報開示を求める初めての要件を定めたものである。

SECの最終ルールは、サステナビリティ報告書の重要なマイルストーンとなる一方で、SECの最初の提案の要求事項を大幅に縮小した。特に、Scope 3の排出量、つまりバリューチェーンに由来する排出量を報告することを企業に義務付けず、Scope 1と2の事業所からの排出量の報告は、大企業のみに義務付け、それも重要であると判断された場合のみとした。

しかし、SECの新ルールは、長らく待たれていた要求事項の要件が緩和されたにもかかわらず、あるいは緩和されたからこそ、一連の難問に直面している。その中には、その実施を阻止することを目的として、「恣意的で、気まぐれで、裁量の乱用であり、法律に従っていない」として、共和党主導の10州が裁判所にこのルールを違法として取り消すよう求める訴訟を起こしたものも含まれている。

【参照ページ】
(原文)Liberty Energy v. SEC, No. 24-60109 (5th Cir. 2024)
(日本語参考訳)Liberty Energy v. SEC, No. 24-60109 (5th Cir. 2024)

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