2月20日、欧州理事会と欧州議会は、EU大気質基準を設定し、2050年までにEU域内で有害物質のない環境を実現するために、汚染ゼロを目指すという提案について、暫定的な政治合意に達した。また、EUの大気質基準を世界保健機関(WHO)の勧告に沿ったものにすることを目指す。本合意は、正式な採択手続きを経る前に両機関による確認が必要とされる。
改正された指令は、微粒子や粒子状物質(PM2.5およびPM10)、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)、ベンゾ(a)ピレン、ヒ素、鉛、ニッケルなど、多くの大気汚染物質を対象としており、それぞれに具体的な基準を定めている。人体への影響が最も大きいとされるPM2.5とNO2の年間規制値は、それぞれ25μg/m³から10μg/m³に、40μg/m³から20μg/m³に引き下げられる。
特定の気候・地形条件により、期限までに指令を遵守することが不可能であることが判明した地域、または既存の家庭用暖房システムに大きな影響を与えなければ必要な削減を達成できない地域については、大気汚染基準の達成を遅くとも2040年1月1日まで延期することを容認。達成期限までに規制値を達成できないことが予測される場合、遅くとも2035年1月1日までまで容認し、さらに2年延長可能とする制度も設ける。これらの延期を要請するためには、加盟国は、大気質ロードマップ(2028年までに策定予定)に、超過を可能な限り短く抑え、遅くとも延期期間の終わりまでに規制値を達成することを示す大気質予測を盛り込まなければならない。
また、規制値や目標値を超過した場合、あるいは特定の汚染物質に関する注意喚起や情報の閾値を超過する具体的なリスクがある場合、加盟国に対し、以下を策定するよう求めている。
- 2026年から2029年の間に汚染物質のレベルが2030年までに達成すべき規制値または目標値を超える場合、期限前に大気質ロードマップを策定する
- 期限後、汚染物質レベルが指令に定められた規制値および目標値を超える地域の大気質計画を設定する
- 警戒基準値を超える地域で、人の健康に対する当面のリスクを軽減するための緊急対策(車両の通行制限、建設工事の中断など)を定めた短期行動計画を設定する
共同立法者は、地域の地理的・気象的条件により、特定の汚染物質濃度を削減する可能性が著しく制限される場合、大気質および短期行動計画を策定するための、よりソフトな要件を盛り込むことで合意。オゾンに関しては、地方レベルまたは地域レベルでオゾン濃度を削減する大きな可能性がない場合、共同立法者は、加盟国が欧州委員会および国民にそのような除外の詳細な根拠を提供することを条件に、大気質計画の策定を免除することで合意した。
暫定合意文書では、欧州委員会に対し、最近のWHOガイドラインおよび最新の科学的証拠との整合性を図るための選択肢を評価するため、2030年まで、およびその後5年ごとに大気質基準を見直すよう要求。見直しに際し、欧州委員会は、達成期限の延期や越境汚染に関する規定を含む、指令の他の規定も評価すべきであるとした。
【参照ページ】
Air quality: Council and Parliament strike deal to strengthen standards in the EU