2月13日、S&Pグローバル・レーティングスが発表した新報告書によると、グリーン、ソーシャル、サステナビリティ、サステナビリティ・リンク債(GSSSB)の発行額は、透明性の向上、新興市場の成長、環境・エネルギー移行プロジェクトに対する需要によってマクロ経済的な圧力が相殺され、1兆ドル(約150兆円)程度まで緩やかに成長すると予想されている。
S&Pは、ボンドの種類の拡大も見込んでいる。グリーンボンドが引き続き主流である一方、トランジションボンドやブルーボンドの存在感が高まっている。
全体として、S&Pは、サステナブル・ボンド市場が成熟するにつれ、GSSSBの発行額の成長軌道は、より広範な従来型ボンド市場を反映するようになると予想している。2024年については、GSSSBの発行額は0.95兆ドル(約142兆円)から1.05兆ドル(約157兆円)になり、2023年の0.98兆ドル(約147兆円)から若干増加し、最高時には14%のシェアに達すると予測している。
債券タイプ別では、グリーンボンドが世界的な環境プロジェクトに対する需要の高まりを受けて引き続き市場を支配するとS&Pは予想しており、その成長率は10%に達し、GSSSBの発行シェアは2023年の56%から59%に拡大する。
S&Pは今後、新たなボンド・ラベルが定着すると予想しており、特にトランジション・ボンドが好調な年になると予測している。トランジション・ボンドは、グリーン・ボンド・ラベルの資格はないものの、気候・環境目標達成に向けた取り組みに資金を必要とするセクターの発行体に、持続可能な金融市場へのアクセスを提供することができる。
報告書は、シンガポール金融管理局(MAS)が最近トランジション・タクソノミーを発表したことや、日本が2024年2月の初回発行額110億ドル(約1兆円)を皮切りに、今後10年間で1,300億ドル(約19兆円)のトランジション・ボンドを発行する計画であることなど、最近の市場の主な推進力に注目している。S&Pはまた、持続可能なブルーエコノミーを促進するデータや政策が増えるにつれて、ブルーボンド、つまり海洋資源の持続可能な利用をターゲットとした債券の発行が増えると予想している。
発行体別では、2023年のソブリン債の発行額が大幅に増加し、過去最高の1,600億ドル(約14兆円)に達し、50%以上増加した。S&Pは、新たな発行体が続々と市場に参入し、日本、ドイツ、フランスなどの主要な発行体がすでに多額の発行を確約していることから、ソブリンGSSSBの発行額は今年も記録的な年になる可能性があると予想している。一方、非金融法人は、歴史的にGSSSB発行の最大シェアを占めてきたが、2023年には減少に転じ、2024年の予測は金利の方向性に大きく左右されるとS&Pの報告書は述べている。
地域別では、2023年にGSSSB発行額の45%を占めた欧州が引き続き主導的な地位を維持する一方、2023年から続く、新興国投資家からの旺盛な需要が見込まれ、新興国の発行体が現地通貨建てで債券を発行し、新たな参加者がGSSSB市場にアクセスするようになることで、新興国の発行体の存在感が高まると予想している。同報告書はまた、アジア太平洋地域のGSSSB発行額は2023年に7.6%増の2,350億ドル(約35兆円)に達した後、10%増加する可能性があると予測している。これは、公的セクターの発行体の市場参加が増加していること、日本が移行債の発行を拡大していること、アフォーダブル・ハウジング・イニシアティブが社会的な発行に拍車をかけていることなどによるものである。
一方、北米は、マクロ的・政治的圧力により2023年のGSSSB発行額が2年連続で減少したが、引き続きこうした逆風に直面すると予想され、インフレ削減法が脱炭素技術の支援に与える影響、脱炭素が困難なセクターへの投資家の関心の高まり、米国の地方債発行体の成長などの促進要因によって相殺される。
【参照ページ】
Sustainable Bond Issuance To Approach $1 Trillion In 2024