英政府、移行計画法定開示フレームワーク発行

10月9日、英国政府の移行計画タスクフォース(Transition Plan Taskforce、TPT)は、企業がカーボンニュートラルを実現するための達成計画、通称「移行計画」の法定開示フレームワークを発行した。

TPTは、新フレームワークを発表する前に、3月に開示ガイドラインと実施ガイダンスの原案を公表していた。完成したTPT開示フレームワークは、5つの柱と合計19の項目で構成されており、企業がカーボンニュートラルを実現するための具体的な計画を策定し、一般に開示する手順について詳細な指針を提供している。

さらに、TPTは実行ガイドも発行し、企業が計画を実行に移す際に役立つ情報を提供している。同時に、セクターガイダンスサマリーの発行を行い、一般の人々や企業からのパブリックコメントを募集することが発表された。計画では、40のセクターにわたるセクターガイダンスの作業が11月に開始され、2024年2月に最終版が発行される予定である。

英国金融当局の金融行動監督機構(FCA)も、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のIFRS S1及びS2に基づく開示を、2025年度の報告を2026年に行う際から必須とする方針を発表している。これには移行計画の開示も含まれており、上場企業と非上場企業の大手企業に対し、義務化される見通しである。

TPTは、今回のTPT開示フレームワークを、ISSBのIFRS S1及びS2、およびGFANZ(Global Financial Alliance for Net Zero)の「ネット・ゼロ・トランジション計画(NZTP)」と連動させ、移行計画に関する部分を補完するものと位置づけている。ISSBとGFANZは、TPT開示フレームワークの発行を歓迎し、双方のガイドラインに関する実践ガイドとして実効性のあるものになっているとコメントした。

TPT開示フレームワークは英国市場を対象としているが、ISSBとGFANZが早期に組み込まれたことから、グローバルなサステナビリティ基準の一部となる可能性が高いとされている。このため、英国以外の企業や金融機関にも影響を及ぼすことが期待されている。

【参照ページ】
(原文)The TPT Disclosure Framework
(日本語参考訳)TPT情報開示の枠組み

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る