WBCSDやBCG、リジェネラティブ農業の経済性分析レポート公表

5月24日、ボストンコンサルティンググループ(BCG)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の生物多様性ビジネス(OP2B)連合は、リジェネラティブ農業に関する経済性分析レポート「Cultivating farmer prosperity: Investing in regenerative agriculture」を発表した。本レポートと経済分析によると、農家は従来の農業システムから再生農業システムへの移行後に15~25%の投資回収を期待できるが、移行には3~5年かかるとされている。新レポートでは、持続可能な農法を採用しようとする農家にとって、経済的なメリットと制度的な障壁が大きいことを検証し、農家の移行期を支援するための公共および民間セクターのソリューションを提示している。

本レポートは、100人以上の米国の農家を対象に調査・インタビューしたもので、再生システムを早期に導入した農家は、再生システムから得られる具体的なメリットとして、土壌の健全化、投入コストの削減、肥料の流出による障害の軽減、生物多様性の向上、異常気象への耐性の向上などを挙げていることがわかった。

また、農家へのアンケートやインタビュー、カンザス州の小麦農家を対象とした財務分析に基づき、長期的には再生農業のビジネスケースが成立し、従来の手法を用いた農家の収益に比べ、120%もの利益を上げることができることを明らかにしている。

レポートによると、3年から5年の移行期間中、農家は作物収量の減少や特殊な設備への資本支出により、最大で1エーカーあたり40米ドル(約5,600円)近い収益性の低下が予想される。しかし、移行農家の短期的な財務リスクは、コストシェア・プログラム、持続可能なリース、保険条件の改善、再生作物保証、政府補助金、価格プレミアム、融資プログラム、生態系サービス市場などの無数の支援オプションによって軽減することができる。

現在の食料・土地利用システムに関連する地球環境、健康、社会経済的コストは、年間約12兆米ドル(約1,700兆円)に上る。持続可能な農法は、生態系の健全性を回復させながら、その損害を軽減することができる。異常気象(干ばつ、洪水、猛暑など)の頻度が増加し、過去数十年の農業による生物多様性の甚大な損失と相まって、再生農法は農家にとって、気候変動に適応し収益性を高める強力なツールとなり得る。

【参照ページ】
(原文)Farmers stand to see increase crop yields and profits with 15-25% return on investment by transitioning to regenerative farming practices
(日本語訳)農家は、再生農法に移行することで、作物の収量と利益が増加し、15~25%の投資対効果が期待できます。

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る