エミレーツ航空、約270億円の「持続可能な航空ソリューション・ファンド」を設立

5月11日、ドバイを拠点とする航空会社エミレーツ航空は、民間航空における化石燃料の環境負荷低減に焦点を当てた研究開発プロジェクトへの投資を目的とした新しいファンドを立ち上げたことを発表した。

エミレーツ航空は、このファンドに2億ドル(約270億円)を拠出。航空会社による最大のサステナビリティへのコミットメントとなるとし、資金は3年間で分散される予定である。

航空部門の排出量の大部分を占める燃料は、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の2~3%を占めており、何も対策を講じなければ、この数字は今後数十年で大幅に上昇する可能性がある。航空業界の気候変動への影響に対処するために進められている取り組みは、通常、航空機の効率改善、持続可能な航空燃料(SAF)の開発、電気や水素ベースの推進システムなど低炭素またはゼロ炭素の推進システムを利用する航空機の開発などだが、これらの多くは開発の初期段階にある。

航空会社や航空機製造業界団体がネット・ゼロへの取り組みを発表し、各国政府が業界に対して排出削減目標を設定することが増えている中、エミレーツ航空社長のティム・クラーク氏は、これらの目標を達成するためには、新しいソリューションが必要であると述べている。

本基金は、先進的な燃料とエネルギー技術に焦点を当て、資金は研究開発に充てられ、SAFの購入やカーボンオフセットを含む運営費には充てられない。

クラーク氏は、新しいソリューションが開発されている間、航空会社はSAFの向上、運航の効率化、最新鋭機の導入などのイニシアチティブを引き続き追求していく、と付け加えた。2023年初め、ボーイングおよびGEと共同で、777-300ERの1つのエンジンに100%SAFを使用した初の実験飛行を実施した。

本イニシアティブは、2023年初めにデルタ航空がサステナブルな航空ソリューションの研究、設計、テストを加速させるためにデルタ・サステイナブル・スカイズ・ラボを立ち上げたことや、ユナイテッド航空がSAFに焦点を当てた新興企業への投資と支援を目的として立ち上げた新しいベンチャーファンドなど、他の大手航空会社が排出削減ソリューションを推進するイニシアティブに続いている。

【参照ページ】
(原文)Emirates creates US$ 200 million aviation sustainability fund
(日本語訳)エミレーツ航空、2億ドルの「持続可能な航空ソリューション・ファンド」を設立

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