7月8日、欧州中央銀行(ECB)はEUの銀行大手104社から提出された情報を基に、気候変動ストレステストの結果を発表した。結果では、炭素価格の急激な上昇と洪水や干ばつが重なった場合、ユーロ圏の大手銀行が少なくとも700億ユーロ(約9兆円)の損失を被ることになると指摘した。
ECBは、最初の気候変動ストレステストでの試算は、信用リスクと市場リスクのみに焦点を当て、景気後退などの間接的影響を考慮していないため、サンプルに含まれる41の銀行の実際の損失額を大幅に下回っていると述べた。銀行やその他の企業は、株主や環境保護団体から、自社の活動による二酸化炭素排出量を削減するために迅速に行動するよう、ますます圧力をかけられている。
本テストでは、ほとんどのユーロ圏の銀行が気候変動リスクをモデル化する枠組みを持たず、融資を行う際に気候変動リスクを考慮しないのが一般的であることも判明した。ECBは、今回の調査結果が銀行の自己資本比率に影響を与えることはなく、「定性的な観点から」ECBの監督業務に反映されるに過ぎないとしている。
ECBは、気候変動や環境リスクをビジネスに取り込むための銀行の進捗状況を測定するために、別途「テーマ別レビュー」を実施している。ECBは、遅くとも2024年末までに銀行がその期待に応えることを期待している。フランス銀行は昨年、中央銀行の中で最初に銀行と保険会社に対する気候変動ストレステストを実施し、イングランド銀行がそれに続いた。イングランド銀行は、気候変動リスクを「第一の課題」として管理できない銀行や保険会社は、年間利益が10%から15%減少し、必要資本が増加する可能性があることを明らかにした。
【参照ページ】
(原文)Banks must get better at disclosing climate risks, ECB assessment shows
(日本語訳)ECBの評価、銀行は気候変動リスクの開示を改善する必要