英・豪銀行連合、中小企業のスコープ3把握支援で新会社 50兆ドル市場開拓へ

6月24日、英ナットウエスト・グループ、豪州ナショナル銀行(NAB)、英スタンダードチャータード傘下のSCベンチャーズなどの大手金融機関は、中小企業(SME)の脱炭素移行を支援する新会社「フォートゥースリー(FourTwoThree)」の設立を発表した。大企業とサプライチェーンを構成する中小企業との間でデータを円滑に共有するプラットフォームを提供し、50兆ドル(約8000兆円)規模と見込まれる中小企業の移行支援金融市場の開拓を目指す。

新プラットフォームは、大企業が自社のサプライチェーン全体の排出量(Scope3)を正確に把握する際の課題解決を狙う。企業の炭素排出量の7割以上を占めるとされるScope3の管理は、気候変動対策を進める上で不可欠だが、その大半を占める中小企業からのデータ収集が障壁となっていた。

フォートゥースリーのプラットフォームは、大企業とそのサプライヤーである中小企業を直接つなぐ。中小企業は簡単な操作で自社の炭素排出量を算定でき、大企業側はその一次データを活用してScope3排出量を正確に測定できる。さらに、中小企業には排出削減に向けた個別の改善策や、融資などへのアクセスも提供される。

社名は、創業者たちが初めて会った時の大気中CO2濃度が423ppmだったことに由来する。同社は、大企業からの要請や規制強化に直面する中小企業にとって、「気候変動対策を身近なものにする」ことを目指している。

フォートゥースリーのグリン・ベーカー最高経営責任者(CEO)は、「中小企業は世界経済で極めて重要な役割を担っている。我々のプラットフォームは、中小企業が持続可能な移行を加速させるための支援や融資、イノベーションにつながる道筋を提供する」と述べた。

また、同社はSCベンチャーズが育成したスタートアップ「ポイントソース・テクノロジーズ」を買収することも発表。これにより、持続可能な金融や補助金の枠組み評価を自動化する機能も強化される。

この取り組みは、大手金融機関が協力して中小企業の脱炭素化という共通の課題解決に乗り出すもので、サプライチェーン全体の強靭化と、企業の気候変動目標達成を後押しするものとして注目される。

(原文)FourTwoThree launches to support sustainable transition for millions of SME businesses worldwide
(日本語参考訳)FourTwoThreeは世界中の何百万もの中小企業の持続可能な移行を支援するために設立されました

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