11月2日、国立環境研究所と国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構などが参加した8ヵ国20の研究機関からなる国際研究チームは、将来の気候変動が世界の穀物収量に及ぼす影響について最新の予測を行った。
本予測の背景として、気候変動が既に世界の穀物生産に悪影響を及ぼしており、気候変動が進行した場合、将来の食料生産にさらなる悪影響を与えると懸念されていることが挙げられる。
今回の予測には、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の気候変動予測と12の収量モデルを用いている。気候変動が進行した場合、今世紀末(2069-2099年)の世界の平均収量は、現在(1983-2013年)に比べて、トウモロコシでは24%減少、コムギでは18%増加との結果が得られた。主要生産国の多い中緯度地域では、これらの収量変化がコムギでは2020年代後半から、トウモロコシでは2030年代後半から顕在化すると予測された。時期としては前回の予測より10年以上早まっており、気候変動への適応をこれまでの想定よりも早く進めることが必要とみられている。
今回の予測結果は、今後、数年間にわたり気候変動への適応技術の開発・開発途上国の適応支援、世界の温室効果ガスの排出削減等を巡る施策決定の場において基盤情報として活用されることが期待されている。
また、本研究の成果は、2021年11月2日付で国際学術誌「Nature Food」に掲載される。
【参照ページ】
最新の予測では世界の穀物収量に対する 気候変動影響の将来見通しが顕著に悪化
~気候変動適応の正念場、従来の想定より早い時期に~