4月22日、経済産業省は「蓄電池産業戦略中間とりまとめ」を発表した。蓄電池産業戦略検討官民協議会では、2030 年、2050 年に向けて急激に拡大していく蓄電池市場の中で、官民が問題意識を共有し、日本の蓄電池産業界が再び競争力を取り戻すための方策について議論を行う。
蓄電池は2050年カーボンニュートラル実現のカギであり、自動車等のモビリティの電動化や再エネの主力電源化のための最重要技術である。また、5G通信基地局やデーターセンター等の重要施設のバックアップ電源であり、各種IT機器にも用いられ、デジタル社会の基盤を支えるために不可欠なインフラの一つでレジリエンス強化のためにも重要である。
蓄電池市場は車載用、定置用ともに拡大する見通しで、当面はEV市場の拡大に伴い、車載用蓄電池市場が急拡大する。足下では定置用は車載用の1/10程度の規模だが、2050年に向けて定置用蓄電池の市場も成長する見込みである。
国別・メーカー別のシェア推移をみると、日系勢は技術優位で初期市場を確保したが、市場の拡大に伴い中韓メーカーがシェアを拡大し、その一方で日本メーカーのシェアは低下した。
電池セル製造を支える鉱物資源・材料のサプライチェーンでは特定国への依存のおそれなどリスクが存在している。 電池セルについても日本の競争力が失われつつあり、海外への依存傾向が強まるおそれが懸念される。原材料確保、材料・セルの製造基盤確保などサプライチェーン全体の維持・強化が必要である。
当面は液系リチウムイオン蓄電池が主流である一方、次世代蓄電池として全固体リチウムイオン蓄電池が期待されている。2020年代後半以降にEV市場で投入の可能性もあるという。日本が研究開発をリードしてきたが、近年各国も研究強化しており特に中国が猛追している。
今後の方向性は、最初の目標として 従来の戦略を見直し、政府も上流資源の確保と液系LiBの製造基盤を強化するための大規模投資への支援を行い、国内製造基盤を確立する。次に2番目の目標として、グローバルを意識して国内で確立した技術をベースに、グローバル市場をリードするプレーヤーが競争力を維持・強化できるよう、海外展開を戦略的に展開し、グローバルプレゼンスを確保する。また3番目の目標として 全固体電池など次世代電池を世界に先駆けて実用化するために技術開発を加速し、次世代電池市場を着実に獲得する。
今後経産省は、3つの目標を併せて、人材育成、国内需要拡大の環境整備、リユース・リサイクル、再エネ電源による電力供給の拡大と電力コスト負担の抑制といった環境整備も進める。
【参照ページ】
蓄電池産業戦略 中間とりまとめ