【ESG 企業分析④】遂にESGを事業戦略に組み入れ!2030年に向けた味の素のESG経営とは

本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。

第4弾として、本日は味の素株式会社(以下、味の素)を取り上げたいと思います。

味の素について

アミノ酸技術を核に食品事業、アミノサイエンス事業を展開。先端バイオ・ファイン技術力が強み。食品事業が中核で日本食品と海外食品に大別。海外売上比率5割以上。米国・アジアを中心に世界展開。今後は冷凍食品や欧州進出に注力。M&Aも活用する。

出所:SPEEDA

CSR/ESGにおける対外的評価

ESGファイナンス・アワード・ジャパン(2020):銅賞

また環境省の「ESGファイナンス・アワード・ジャパン(2020)」環境サステイナブル企業部門において銅賞を受賞しており、ESG投資に関する取り組みについて国からも評価を受けています。

改善度の高い統合報告書(GPIF調査):4運用機関が選定

・2019 年度では事業戦略とそれを支える経営基盤としての ESG 項目が分離していたが、今年度では事業戦略に ESG 要素がより組み込まれた。企業の将来像を元にバックキャスティングし、昨年度よりも細かい非財務目標・KPI を設定した。
・2030 年の目指す姿として「食と健康の課題解決企業」とのビジョンが掲げられ、同社の取り組みとアウトカムが分かりやすく解説されている。また、従業員という重要なステークホルダーの観点で、「人的資産の評価」というセクションで詳細な取り組みが開示されており、2030 年の定量目標値も示されている。
・2030 年のありたい姿「食と健康の課題解決企業」に向けて、無形資産投資を強化していくことが社長メッセージを通じて明確に伝わる。企業文化変革、事業モデル・オペレーション変革、人的資産強化といった非財務の取組み記載が充実。

出所:「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」GPIF(2021/2/24)

環境省やGPIFの運用機関からも直近のESGに対する改善度への高い評価を受けている味の素は、ESGに関してどのような開示をしているのでしょうか。次章以降は評価されている項目を具体的に見ていきたいと思います。

2020年度から始まったESG要素の事業戦略への組み込み

味の素では2020年度の統合報告書から、ESGが事業戦略に具体的なアウトカムと共に組み込まれるようになりました。「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創する」というビジョンから逆算した細かい非財務目標やKPIが設定されたことにより、投資家からのESGへの評価が一段と上がった印象です。

Integrated Report (ESG)
Integrated Report (ESG)

出所:統合報告書2020

社長からのESG/SDGsに関する明確なメッセージ

またサステナビリティ全体への取り組みに関しても、会社HP上に一セクションに集中して分かりやすくまとめられており、Topページの社長メッセージからも2030年の目指す姿が明確にイメージできます。

また統合報告書上でも、これまでのPL重視の経営・規模のKPIを追うことから脱却し、ESGとその先にある企業価値向上を達成すべく資本コストを上回るROIC重視の収益方針に転換するなど、企業文化を大きく変える意思決定を行ったことを語っています。

Integrated Report (ESG)

無形の人的資産への投資

また上記に加え、非常に投資家からの評価が高かったのが「人的資産の評価」セクションにおける取り組みでした。一人あたりの人財投資を増加させ、2030年度までに女性取締役とライン責任者の30%を女性にする、といった具体的な定量目標値を記載したのは従業員を重要なステークホルダーとして捉えており、非常に好感をもてます。

Integrated Report (ESG)

出所:会社公表IR資料

最後に

味の素のESGに関する取り組みと、対外的に評価を受けているポイントをまとめましたが、いかがでしたでしょうか。2030年のありたい姿を明確にし、企業文化の変革まで含めて徹底的にESG・サステナビリティにこだわろうとする味の素は、今後も資本市場から高い評価を得ていくのではないかと我々は考えています。

次回第5回は不二製油のESG開示分析です。お時間がある方は前回のリコーの記事も是非ご覧ください。

【ESG 企業分析⑤】取締役にC”ESG”Oが存在!不二製油グループが力を入れたマテリアリティ特定プロセス

【ESG 企業分析③】ESG指標と賞与が連動!リコーの徹底したESG取り組み姿勢

よろしくお願いします!

—————————-

また日本最大級のESGメディアであるESG Journalを運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社では、統合報告書を発行している主な日本企業100社ののESGに関する評価やIndexの組み入れ先、各種データの参照をまとめたESGコンプス(ESG開示に関する企業比較)を無料で提供しています。

こちらを見ることで、今ESG開示において最も評価されている企業100社がどのような開示を行っているかを把握することが可能です!もしご興味がある方は、是非以下のリンクからダウンロードしてください!

【無料ダウンロード】 ESG開示に関する上場企業100社比較データ

関連記事

“ツールーへのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2024-10-3

    お役立ちツール「開示基準の早見表」のご紹介

    ESG Journalでは、実務に役立つ資料やツールを無料で公開しています。今回は、大好評の「開示…
  2. 2024-9-26

    デロイトが2024年CxOレポート発表:気候変動が最重要課題に

    9月11日、ニューヨーク—デロイトが発表した「2024年CxOサステナビリティレポート: ビジネス…
  3. 2024-9-25

    SAP、ESG報告の新たな統合ソリューションを発表

    9月11日、テクノロジー企業であるトムソン・ロイターズ(TSX/NYSE: TRI)は、SAPとの…
ページ上部へ戻る