米国グリーンビルディング協会、持続可能な建築基準「LEED v5」を発表

4月28日、米国グリーンビルディング協会(USGBC)はLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)プログラムの最新バージョンであるLEED v5を発表した。LEED v5は、これまで25年にわたり世界中の都市やコミュニティに多大な影響を与えてきたLEEDの蓄積を踏まえ、現代の課題への対応力を強化したものである。新バージョンでは、建築オーナーや設計チームがより効率的かつ直感的に認証を取得できるよう、技術面でのアップデートも図られている。

LEED v5の特徴は、脱炭素化、人間と生態系の健康、レジリエンスという三つの主要テーマに重点を置いている点に現れている。現在の気候変動問題に対応するため、認証取得に必要な得点の半分を脱炭素化に関わる項目が占めている。運用時だけでなく、建設資材の製造段階(エンボディドカーボン)、冷媒、交通など、建物全体のライフサイクルを通した温室効果ガス排出量の削減が求められている。すべてのプロジェクトは、将来的な運用カーボン排出量の予測や長期的な脱炭素戦略の策定を義務付けられており、持続可能な変革への道筋が示されている。

また、人々の健康やウェルビーイングへの配慮も一層重視されている。居住者や周辺コミュニティの健康を高めるための方策にクレジットが与えられ、透明性や説明責任に対する社会からの要請にも応える内容となっている。ここ数年、世界各地で健康的かつサステナブルな空間への需要が拡大しているが、LEED v5はその動きを加速させるだろう。

レジリエンス(強靭性)は、現代社会が頻繁に直面する自然災害や社会的リスクに対応するため不可欠な要素である。LEED v5では全プロジェクトで気候レジリエンス評価が必須となり、潜在的なリスクや脆弱性、災害時の対応力の把握と向上が求められている。これにより、資産価値の長期的な保全、経済的な安定とコミュニティの安全確保にも資する。

投資価値と経済性の面でもLEED認証は強力な武器となり得る。調査によれば、LEED取得済みの資産は非認証物件に比べて平均21.4%高い販売価格を実現し、賃貸収入も11%上昇する傾向が認められている。さらに、水やエネルギー、廃棄物の削減効果も平均20%を上回り、結果として利用者の生産性や健康向上にも寄与している。

また、LEED v5は透明性と説明責任を担保する仕組みをさらに強化した。認証プロジェクトにはパフォーマンスと具体的な施策を示すインパクトレポートが発行され、社内外の関係者に環境戦略と成果を明確に示すことができる。また、地域ごとの優先事項を踏まえ柔軟に対応する特別なカテゴリーも設けられている。第三者による厳格な認証の仕組みは、設計段階から運用に至るまでプロジェクトチームの高い責任感と実効性を促している。

今回のアップデートは、世界各国のLEEDユーザーから7,000件を超えるコメントを受けて策定され、2024年にはUSGBC会員による最終承認も得ている。LEED v5は新築、内装、既存の商業建築プロジェクト向けに既に登録受付が始まっており、今後ますます多くの建築物に導入される見込みだ。

(原文)U.S. Green Building Council Launches New, More Comprehensive LEED Rating System for Sustainable Buildings
(日本語参考訳)米国グリーンビルディング評議会、持続可能な建築物に対する、より包括的な新しいLEED評価システムを発表

関連記事

おすすめ記事

  1. TCFD・IFRS・CSRDの移行計画とは:業界別に考える開示ポイント

    2025-7-10

    TCFD・IFRS・CSRDの移行計画とは:業界別に考える開示ポイント

    ※本記事は2024年10月の内容にGX-ETSに関する内容を追記し再掲載している。(2025年7月…
  2. TNFD開示を支援する 主要ツール比較と選定ポイント

    2025-6-11

    TNFD開示を支援する 主要ツール比較と選定ポイント

    2024年にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-…
  3. 進化するサステナビリティ開示 ― 傾向から考える“自社の対応状況”

    2025-6-6

    進化するサステナビリティ開示 ― 傾向から考える“自社の対応状況”

    サステナビリティ情報開示の高度化が急速に進んでいる。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)…

ピックアップ記事

  1. SSBJ(気候関連開示基準)とGX-ETSの共通点とは?~比較解説と実務効率化~

    2025-8-14

    SSBJ(気候関連開示基準)とGX-ETSの共通点とは?~比較解説と実務効率化~

    日本企業にとって、2026年から「気候変動対応・開示」は、企業価値を左右する重要な経営課題になるで…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 2025-8-11

    バークレイズ、サステナブルファイナンスで累計2,200億ドルを達成

    7月29日、英国大手銀行バークレイズは、2025年上半期のサステナビリティ投資家向けプレゼンテーシ…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る