日本製鉄、炭素負荷低減に向けた施策を発表

5月10日、世界最大級の鉄鋼メーカーである日本製鉄は、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」プロジェクトの一環として、新たな炭素削減行動を発表した。同社は、高炉(BF)製鋼から電気炉(EAF)製鋼へのシフト、より多くの無方向性電気鋼板(NO)の製造を計画する。

2021年3月には、2030年までにCO2排出量を30%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指す「カーボンニュートラルビジョン」を発表した。本ビジョンは、製鉄プロセスの脱炭素化による自社の排出量削減、顧客の排出量削減に貢献する鉄鋼製品・ソリューションの提供の2つのアプローチから構成されている。

世界のメーカーがサプライチェーンの脱炭素化に取り組む中、低炭素鋼の需要は今後ますます高まっていくと見られる。鉄鋼は、化石燃料の使用による温室効果ガス(GHG)排出量の7~9%を占めており、CO2の排出量が多いことから、GHG排出量削減が課題となっている。

EAFは、石炭を燃やすのではなく、電流で熱を発生させ、金属を溶かして成型する。日本製鉄は、BF製鉄からEAF製鉄への移行に向けた検討を開始することで、CO2排出量の大幅な削減を見込んでいるが、生産コスト上昇のため、日本政府によるさらなる経済支援が必要であるとしている。

日本製鉄は、電気鋼板の生産能力を増強し、品質を向上させる計画を発表してきたが、今回、NO生産能力を増強するための追加策を発表した。エコカーの需要が高まる中、モーター鉄心の生産に使用される高効率・高品位材料であるNOの需要も大幅に増加することが予想される。

このほか、ソリューション技術「NSCarbolexTM Solution」、スチール製品「NSCarbolexTM Neutral」の発売、グリーンボンドの発行など、ビジョン実現に向けた施策を実施し、NOの生産能力と品質を高めていく。

【参照ページ】
高炉プロセスから電炉プロセスへの転換に向けた本格検討を開始

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